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2.


最後に三つ目。

貪欲であり、さらに確率に疎いこと。

地位を失うのが怖いといっても、カジノを見た瞬間にギャンブルをせずに警察に電話されるのは不味い。この場合だけは客に不法賭博の罪はなく、カジノ側だけが危険に晒される。

だが、一回だけでもギャンブルに参加すれば共犯になるのだから、勝った場合の倍率をちらつかせてやれば貪欲な人間は食らいつきやすい。

本来、ギャンブルとは人為が介入しない自然の確率が勝敗を左右するものである。

つまり、冷静に確率を計算できる人間は歓迎されない。前の二つの条件を満たしていても、数学者などは客にはいなかった。こういう人間なら不自然な確率からイカサマを見破ることも可能だ。

今回は新規の客になることが最も効率的で、また最も安全なルートである。カジノに案内してもらうにはこの三つの条件を満たさなければならない。

そこで、俺達は計画を立てた。

「…変装は腐る程してきたが、執事は初めてだ」

「意外と様になってるぜ?」

「意外とってなんだよ」

「ちょっと変えただけでホストに見えなくなるんだから、不思議だよなぁ…」

「先輩の本気を舐めるなよ、ひよっこが。…じゃ、『らめって言っても止まらない・カジノでイカサマ大作戦!』開始」

また顔を引きつらせた慧を無視して、俺は洗車したばかりのピカピカの高級車をホテルのエントランスの真ん前に停めた。

隙なく着込んだ黒のスーツが乱れていないことを確認し、品のいい深いブラウンのネクタイをもう一度締め、シャツも第一ボタンまで締めている。

髪は既に真面目に見えるように整えており、黒縁の度なし眼鏡のブリッジを押して上げる。真っ白い手袋をした手をハンドルから離して、後部座席にいる慧に視線だけで笑ってみせた。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。