「名付けて、『らめって言っても止まらない・カジノでイカサマ大作戦!』…でどうだ」
「………………」
「慧?」
「最近、お前を寂しくさせた自覚はあるんだ。マジで悪かった、コウ。でもな、…そのネーミングセンスはどうにかならねぇのか。頼むから」
慧が顔を引きつらせた。
さすがにお互い社会人で、俺も慧も引っ越すかどうかの問題は目先の仕事を片付けてから話すということで納得した。それでも慧の目は悲しそうで、俺を引き留めようとしていた。
とりあえず、今は依頼を優先する。
地下にカジノを併設しているというそのホテルはかなり高級なところで、どれだけの常連客だとしても簡単にカジノへは案内しないらしい。逆に、カジノの客は必ずしもホテルに宿泊するとは限らない。
客のリストを洗えば分かることがあった。カジノの客にはいくつか共通する条件がある。
一つ、一定の財力を持っていること。
ギャンブルに回せるほどの余裕があり、大金を賭けて負けても表社会にバレないほどの財力だ。
つまり、年収数千万の人が一夜で数百万負けたとしてもその人の生活に大差はなく、消えた金を訝しむ人もいない。年収数百万の人が一夜で大金を失ってしまえば、容易く周りにバレてしまうのだ。
ここから言えることは、…このカジノは比較的大きい金額の賭けを推奨している。
そして、高い確率でイカサマをしている。
二つ、地位がある。
地位があることは、もちろん、財力に直接結びつくが、さらに重要な意味を持つ。
カジノの存在を他言しないのだ。大金を負けたことで怒り狂ってカジノの存在を警察に言おうものなら、不法賭博で自分も引きずり下ろされる。地位を失いたくなければ黙っているしかない。
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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。