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3.


「そういやぁ、まだ何も頼んでねぇな。何かオススメとかあんのか?」

「全部オススメだから」

「いや、そこは絞れよ」

「じゃあ、こうしよう」

そいつは悪戯っぽく口角を吊り上げた。

色っぽい笑み。夜によく似合う笑みで、クラブの淡いライトに照らされて雰囲気を増すが、きっと明るい陽射しを浴びても綺麗だろう。

「ゲームをしよう。俺がゲームに勝ったら、俺が言うワインを頼め」

(なんだ、貢がせたいだけか)

そう思うと少し冷めてしまった。清宮という名前で俺の立場を知ったから、多少高い酒を頼ませても渋らないと考えているんだろう。

綺麗な見た目をしていたところで、興味があるのは客の財布の中だけなんだ。…いや、ターゲットを騙す俺も興味があるのはデータだけなんだから、本質的には俺も変わらない。

内心、鼻で笑ってしまった。

「じゃあ、俺が勝ったら?」

「お前の言うことなんでも聞いてやる」

これは随分と自信があるらしい。

「いいぜ?ゲームは?」

「ポーカーでどうだ?」

「はっ。俺は苦手じゃねぇけど」

「じゃあ、決まり」

ポーカーなんて慣れてる。仕事の付き合いで外国のカジノにも行くし、何よりこんな駆け引きのアマチュアに負ける気なんてしない。

なんでも言うことを聞いてくれるって言うんだから、清々しく圧勝して少し意地悪な要求を飲ませたかった。このイラつきも少しは収まる。

だが、このポーカーこそ今後の運命を大きく分けるとは、まだ思ってもいなかった。

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