雨が降った、
こんなつもりではなかった。
ただ、遠くから見ていられればよかったはずだ。
それなのに、どこで違った…?
「…雨、ですね。」
たまたま歩いて出てきた市中見回り、突然の雨にうんざりしつつ止むまで待とうと入った軒先には先客がいた。
「……ああ」
「珍しいですね、こんなところで会うなんて。」
顔を見ずに続く会話。
雨は本降りになり、当分止みそうにない。
「土方さん、」
「……なんだ」
先が続くと思ったセリフだが、中々続く言葉が来ない。
横を向けば目に涙を湛え俯く姿。
「土っ、方さ、ん…」
「…泣いてんじゃねぇ」
どうしたらいいのか、いつも気丈な彼女が泣いている。
その現実に動揺を隠せない。
「なん、で……、なんで、今日出会ってしまったんですか…っ」
「…知らねぇよ」
「私…っ、忘れようと、していたのに……!」
そこまで言われて気付かない程鈍感ではないと思っている。
ただ、次に取るべき行動を自分がしていいとは思えなかった。
「好き……っ、です…」
彼女は何度もそう呟いた。
もう、どうしようもないのに。いっそ、さらってしまおうか。
雨が降った、
(次の日彼女は”姐さん”になった)(さよなら、)
090812
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