始まったのは何ですか?


─…春、それは始まり。


沢山のモノが始まる季節…












校門の前、大きな白い看板に並盛高校入学式と楷書体で書かれている。


そう、今日は待ちに待った入学式。
変な家庭教師が来たり、イタリアから帰国子女が来たり、マフィアだとか暗殺部隊だとか未来の俺は死んでるとか意味がわからないような出来事ももう2年、3年前の事。


今俺は無事、中学を卒業し高校に入学出来た。
不本意だけどこれも皆あの家庭教師のおかげだと、感謝してる─…





「おはようございます十代目!!」


──また今年も名前じゃ呼んでくれないのか…


「よっ!ツナ!まだ制服大きすぎんだけど」


「おはよう獄寺君、山本。俺も制服大きいよ…だぼだぼ」

そう言ってズボンの裾を摘まむ。
まだ身長のびるんだからと言われて大きめのを買ったはいいが少し大き過ぎるとも思う。


「まだ実感わかないよー、俺達が高校入学だなんてさ」

「ははっ、確かになー」



変わらない笑顔、変わらない関係、変わらない会話。

高校入学するからって特別な事なんて何にもない。




……ほとんどの並中生がここにくるんだ、エスカレーター式の学校と変わんないよ。




それでも皆もう中学生って感じはしない。
獄寺君
だって大人っぽくなってるし山本だってもうがっちりしてる。元々中学生には見えないくらい大人っぽかった二人だから仕方がない事なんだろうけどやっぱりそう思う。


そんな二人が羨ましくないなんて言ったら嘘になる。
だけど俺だって…
少し、


変わったって思いたい─…





「体育館ってどっちだっけ?」

「あっちだ…「こちらです十代目!」……。」

「ご、獄寺君っ…!!」


何故か目を輝かせながら走り出す。俺と山本は置いてきぼりを食らってる。


「……全くもう、獄寺君ったら」

がっくり肩を落としてため息を吐く。

「ははっ、変わんないのなー、獄寺も。」

「そりゃ昨日だって会ったじゃん、変化なんて分かんないよ」

「そっかー?結構分かるもんなんだけどなー」

「えぇ?なんか変わった?」

「んー、流石に自分の事はわかんねぇけどツナなら分かるぜ?」

「…え?」

「髪、のばしてるの気付いてねぇって思ってた?」

「……!!!!」





思ってた。
誰も気付いてないって…



まだのばし初めて二ヶ月だし、誰も何も言ってくれないから…



「何でのばしてんだ?」

「えっ…!!そ、それは…」



──…髪長いヤツかなー


「なぁ、何で?」

「あ、だから…」


──…だって長い方が髪にキスしやすいじゃん?


「ツナ?」

「っ、何でもない!……べ、別に意味とか、ないからっ…」

「ふーん、そっかー残念。」

「は…?何、で?」

「だってさ、」









雲が太陽の光を遮る。
視界は暗くなって山本の表情を隠す。山本は小さな声で呟いた。


カァッと頬が熱くなるのを感じる。












──俺の為にしてくれたって思ってたから──













「……山、本?」

「ツナ、意味ねぇんならさ、これからは俺の為にのばしてくんね?そしたらさ、沢山キス出来るし」




──…もう俺の顔は真っ赤だと思う。暗くて良かった。






「──…ぁ、うん…



………わかった。」



そう答えるだけが、唯一俺に出来た事。

もう山本しか見えないって思った…











始まったのは何ですか?
(あー、ヤベェ。今日気温高いのな)(そ、そうだねっ!)





080318

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