貴方を見つめる


「……京極堂、向日葵が咲いている。」







夏の暑い盛り、目眩坂に向かう道を歩く。

ふと視線を端に移せば目についた二株の背の高い向日葵。




「なんだい、今頃気付いたのか?毎年咲いているじゃあないか。」

「そうだったか?」

「そうさ、去年もその前も、ずっと咲き続けている。」



記憶に無いなあ、なんて言ったら店に着いた後もなお説教が続きそうだから言わないでおこう。

だが、ずっとここに在ったのだったら何故自分は気付かなかったのだろうか。そう考えてみればふと思った……そういえば自分はいつもふらふらと周りの景色等見る余裕も無くここを通るから。だから見えなかった。そう考えればしっくりくる。
今は何故だろう、なんだかとてもゆっくりしている。






「強いな…」

「君に比べたら何だって強いさ」

「そりゃないよ、京極堂…」





抗議の声をあげながらも納得してしまう自分がいる事にむしゃくしゃする。

蕾のうちは毎日毎日、太陽を追いかけ、花が開けば誇らしげに自身を主張し見る者を包み込む様に勇気付けてくれる。種が出来れば落とさぬように抱きしめる。


それに比べたら自分なんて比べるに値しない程弱いではないか…



途端に考え込んでしまう彼を見て溜め息を吐く。
いつもの事だと割り切れないから面倒なのだ。




「…はあ、また君は……何故そうやってすぐに難しく考える。」

「何故と言われても…」



答えに窮する。




「別に君は弱くていいんだよ。」

「は…………?」




弱くていいなんて彼の口から出るだなんて思わなかった。
いつも弱い自分を叱咤する彼が、今日は一体どうしたのか。



「勘違いしないでくれよ、僕は君が軟弱なのを推奨しているわけでは無いんだから。」

「わ、わかってるさ…だけど、どういう事だい……」



それは、と言って何の躊躇いも無くサラリと自分にとって大変な事を言った君はいつもの失語症を発祥してしまった自分を置いてスタスタと漸く辿り着いた店の中に入って行った。







「僕が君を守ってやると言っているんだよ。だから君は弱くていい。ずっと、守ってやるから。ずっと、見ていてやるから。」















貴方を見つめる
(な、なんだいそれは…)(なんだ、向日葵の花言葉だよ)(そんな事も知らないのかい?)(うっ……。)




080728

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