きっと変わらない愛と共に


空を見上げれば一面の薄紅色が視界を埋める。それは、まだ綻び始めたばかりの小さな花弁を風にそよがせて可愛らしく笑う。


「また、春が来た。」


縁側に腰掛け、片手で石榴を撫でる。程よく暖かいこんな日は花見にはもってこいの筈なのだが、出無精な彼は頑なにそこを動こうとしない為、河川敷には行かず、自分は一人、と一匹、でささやかな花見に興じている。


「なあ、やっぱり川まで行かないか?」

「………珍しい事もあるものだね。君から外に出ようなどと言うなんて。」

「失礼だな。僕だって季節を楽しむ心くらいはあるさ。」

「そうかい?知らぬ間に季節が巡っていた、それが常の君じゃあないか。」

「………まあ、確かにそういう時もあるが」

「そういう時ばかりだろう」




ここに来てからずっとこの繰り返し。そろそろ飽きてきたその台詞に、一つため息をつき、もういいよ、とだけ返しまた桜を眺める。


「……京極堂」

「なんだい?」

「いや……なんでもない」

「…そうかい」

「……京極堂」




二度目に呼んだ時、返事はなかった。それでも続ける。
いつの間にか、石榴は眠っていた。




「京極堂…、来年は……来年は川まで行こう。」

「……気が、向いたらね」

「ああ、」




今はそれで、構わないさ。






来年も君と共にあれるように、桜に誓うよ。





そう、心で呟いた。





















きっと変わらない愛と共に
(変わらないでいて欲しい、)(君の心も精神も)




090311
※精神=こころ/桜の花言葉=精神美


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