電波送完了、受信待機中


「おや?綱吉君、いつから携帯なんて持つようになったのです?」


学校からの帰り道、たまたま骸と出会い、共に帰路を歩んでいる途中ピリリリリと無機質な音が鳴り響いた。もしもしと決まり文句を言った後、二三言話し電話を切る。骸の問いかけには一拍息をついてから答える。



「えー…?いつからかなあ、多分もう半年は使ってると思うよ」

「半年も?!な、なんで教えてくれなかったのですか!」

「え、いや、別に聞かれなかったし…」

「クフンッ…!!そんなバナナ!」

「いやお前はナッポーだ。」

「いやそう意味じゃなくですね……ではなく!!」

「どっちだよ!」

「メアド!電話番号!あと顔写真!プリーズの方向でお願いします」

「お前何キャラ、」



眉を寄せつつも慣れた手付きでプロフ画面を開き赤外線通信の準備を整える。骸も茶番劇と同時進行で受信画面を開く。ものの数秒でお互いのデータを交換し終え、再び歩き出す。

顔写真は丁重にお断りしたため骸はなにやらぶつぶつと呟いていたが慣れた様子で完全にスルーしている綱吉。諦めたのか骸はポケットから携帯を取り出し文字を打ちだした。


すると先程とは違うが、似たような無機質な音が鳴り出した。
確認すればそれは骸からのメール受信を知らせるもので、綱吉はじとりと骸を睨み付ける。


「……普通に喋ればいいだろ?」

「いいじゃないですか、ちゃんと届くか確認ですよ」



満面の笑みを称え、幸せそうに隣を歩く骸を後目にボタンを数度押して、また閉じる。すると今度は骸の携帯が軽快な音楽を発する。



「それじゃあ骸、オレこっちだから。」



そう言って道を曲がろうとしたがふいにベストの背中部分をつままれ、止まらざるを得なくなる。そのまま間髪容れずに強く引かれ後ろに倒れそうになる。その身体を今度は強く抱き締められた。


「なっ…なんだよ骸!」

「好きです」

「は、あ?何を…」

「大好きです、好き、好き…」

「も…わかったから離せって…」

「僕の傍から、離れないで下さい…」

「…ここに、いるだろ」



好き、と何度も何度も囁かれる。その度に腕に込められた力は強くなる。骸の右手、開かれたままの携帯の画面には先程自分が送った文が未だに開かれていた。

それを読み返し、恥ずかしくなる。いつもは額に宿る炎が、今は顔面にあるようだ。


「綱吉くん……」

「骸、…もう、わかったから。だから骸……泣かないでよ」

「…泣いてなんて、いませんよ?」

「嘘つき。骸は泣いてる。それが、泣くって事なんだよ」

「でも、悲しみなんて感じてませんよ…?」

「人はね、幸せでも泣くんだよ」

「………………おかしい、です。そんな…」

「おかしいんだよ、骸もオレも、」





一筋の軌跡を陽が照らす。
大好き、の文字は逆光で見えなくても、大好きの言葉は溢れ出てくる。




人通りの少ない静かな路上で、電波な彼らのその影法師は、人知れず重なった。



























(メアドに69って入れて下さい!)(断る!)




090126

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