隣の芝があおいから悪い



娑婆の空気はうめぇなんて後輩とふざけていた数時間前。夜勤明けで後輩とご飯を行ってきた。それから解散してのんびり公園を通りながら帰っていた。そうしたら雄英の制服を着た知っている2人の姿を見かければ追いかけたくなってしまった。眠気と共に程よいさっきまで飲酒していたお酒。それが思考をより遅くさせられる。もう何でもいいと思う。

「あー!!デクとかっちゃん!!」
「あ゛ぁ?!・・・・・・クソナースっ!」
「かっちゃん!!苗字さんに失礼」
「いいよ緑谷くん。かっちゃんだもん」

走って行けばかっちゃんが私の頭を軽く掴み脅した。その瞬間彼は顔をしかめた。なんだい、かっちゃん。お酒臭いというのか。ビールにハイボール、ワイン、日本酒などちゃんぽんしたけどいいじゃない。
ムカついてしまったので彼の肩を勝手に組む。そうすればふざんけんなという顔をしている。忙しいなかっちゃん。これでも私は年上だぞ。

「おい酒飲んだのか」
「・・・ほんのちょっと?」
「ほんのちょっとにしては足取りがおぼつかない気が・・・」
「緑谷くん気にしたら負けだよ。大人は呑まないといけない時は呑まないと」
「は、はい!」
「騙されるな」

爆豪くんは肩を組まれたことが不服だったらしく払われた。爆豪くんは不機嫌な表情を浮かべながらこっちを睨んでいる。何でこんな所に2人がいるのかは分からないけど、2人が一緒に歩いているのが感動だ。心のシャッターで激写しておこうと思う。ヒロアカ1巻でのかっちゃんがデクのヒーローノートを燃やした事件は衝撃的だった。だけどあれが今じゃ仲良くやっていてヒロアカファンとしては凄いことだと思う。

「苗字さん座りましょうか」
「おっと緑谷くんナンパですか?」
「ち、違います!」
「緑谷くん可愛い」

真っ赤な顔をしながら近くのベンチに誘導する彼は正直草食小動物にしか見えない。ペットにしたら可愛いだろうに。ヒロアカの主人公に何を思ってしまったんだ。そんなことを思っていれば、爆豪くんはいつの間にか冷たい水を買ってくれて私の顔面に押し付けてくれる。ペットボトルが冷たくて気持ちいい。でも女子の顔面にペットボトルは押し付けてはいけないと思う。ただ入院中の彼を見ていれば、周りことをちゃんと見てるし彼なりの気遣いがあった。あとはもう少し素直だったらいいんだけどもね。

「爆豪くんありがとう」
「さっさと飲めや」
「うぃ、一気飲みします」
「苗字さんお酒飲むとこんなに変わるんですね」
「たぶん夜勤明けだからだよ」
「おい夜勤してたのかよ、今すぐ帰るぞ」
「お、かっちゃん優しい」

もうちょっと付き合ってよ、と彼らの腕を引っ張りベンチに座らせる。抵抗すれば彼らにとって簡単に避けることは出来るのにそれをしなかった。これでも私は年上だし、入院中散々彼らの喧嘩を止めたのは私だ。緑谷くんは優しいからだろうし、爆豪くんは何だかんだ優しいから付き合ってくれる。本当に2人とも優しい。私も彼らと高校生やっていたら、楽しかったのかもしれない。だけど私には彼らみたいに敵と立ち向かう勇気はないな。

「聞いてよ、仕事の愚痴」
「俺は帰るぞ」
「お酒飲んだ女の話聞きたくないよねごめん」
「急に謝んな、情緒不安定かよ」
「なら聞いてよ、ねぇ緑谷くん」
「えぇ!?なんで僕に振るんですか!」

漫画の登場人物として見ていた時は2人ともかっこいいって思った。だけど彼らがセントラル病院に入院してきた時は、我儘なガキンチョとしか思わなかった。すぐ怒鳴り散らすし、すぐ喧嘩するし、すぐ機嫌悪くなるし・・・。なんと言うか2人をどうにかする度に、私が呼ばれて仕事が進まないことが多かった。うちの病棟で無個性なのは私だけ。デクとかっちゃんが1番最初に喧嘩した時はちょうど私は目の前にいた。止めなきゃと思い「雄英生は無個性の善良な看護師さんに怪我させるのかな?」と圧をかけたら、2人とも喧嘩をすぐさまやめたのは面白かった。

「今日ね患者さんから無個性のお前が担当は死んでも嫌だって言われてね。担当交換したの、ムカつかない?」
「え・・そんな事あるんですか?」
「初めて言われたよ。その人の個性が2センチぐらい角が生えるっていう個性なんだけど私とそう変わらなくない?」
「そういう奴はシメればいいんだよ」
「いやいや患者と看護師だからそれはダメ」
「散々俺らのことお前シメただろ」

それは君らが病院破壊しそうな勢いで、喧嘩し始めそうだったから頭をポンっと叩いただけだ。勘違いしないで欲しい。常習犯である彼らには分からせる必要があったからそうしたんだ。
ただ今回私が無個性で拒絶されたのは初めてちょっと驚いた。元の世界な無個性が当たり前だったし、かれこれ二十何年間無個性で生きてきた。だから無個性なのは別にいい。ただ無個性だからそういう態度を取られたことがムカついて後輩と今日は呑みに行くことにしたんだ。

「苗字さんって無個性なんですよね?」
「そうだよ、急にどうしたの?」
「苗字さんは自分のことどう思っているのかなって」
「別に無個性でも個性があっても変わらないと思うよ。私は私だし、私のことを大切に思ってくれる人がいれば個性なんてどっちでもいいと思うだよね」
「・・・強いですね」
「別に強くないよ。私だから好きになってくれた人がいて、その人が私を信じてくれれば充分だよ。緑谷くんにもいるでしょ」

元無個性の緑谷くんと現無個性の私。個性の有無があっても何も変わらない。彼は無個性でもヒーローになれただろうし、雄英の同級生みたいな大切な人をちゃんと見つけられたと思う。緑谷出久だからこそ僕のヒーローアカデミアの主人公になれたんだ。こんなに心優しい彼だから。そしてその隣にはぶっきらぼうだけど優しい爆豪くんが居て。
この先彼らにどんなことがあっても大丈夫だ。きっと彼らの仲間が付いているんだから安心だ。

「よし帰ろー!」
「切り替えはやっ!」
「情緒不安定過ぎるだろクソナース」

緑谷くんと爆豪くんに話を聞いて貰って、スッキリはしなかったけど落ち着いた。お礼にジュースを買ってそのまま帰ろうとすれば、ヒーローの卵達に家まで送ると言われてしまった。そのお言葉に甘えて3人並んで家に向かうことにした。


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