未来ではなく、ただの明日。



(ホークスSide)

今日は名前さんが連勤4日目だ。そろそろ疲れがピークだしどうやって甘やかそうかな。そうだ、帰りにケーキを買って帰ることにしよう。きっと太っちゃうと怒りながら一緒に食べてくれるだろうな。そんな名前さんの顔が早く見たいなと思いつつ、いつも通り街中をパトロールをしていた。そうしていれば事務所から俺の携帯に1本の連絡が来た。

"苗字さんが個性事故に巻き込まれた"

サイドキックから話なんて理解出来ずに電話をぶち切る。そんな事を言われてしまえば、彼女の元に向かうという選択肢しかなかった。適当に残った仕事をサイドキックに投げつける。そんなことをして名前さんの所に行ってしまえば怒られるのは目に見えていた。だけど、もし、もし名前さんに。名前さんに何かあったら俺は正気を保てる自信がない。

そんなことを思っていたのはたった数10分前の話。





普段より剛翼を駆使して名前さんがいるというセントラル病院に急いだ。顔パスでセントラル病院は簡単に入れた。そのまま名前さんが働いている病棟に向う。一部の人間しか知らない名前さんとの関係。以前飲み会の時に、彼氏のフリして"俺の名前がご迷惑をおかけしたみたいで"と彼氏と名乗った経緯がある。だからその同僚たちは俺を見た瞬間に、ニコニコとされてしまった。そのまま顔を知っているスタッフに案内され、休憩室みたいな所に行けば"ごゆっくり"という言葉を突き出された。名前さんが個性事故に巻き込まれたという現状に何がごゆっくりだ。
休憩室の扉を開ければその意味を瞬時に理解した。


「あれ・・・啓悟来たの?仕事は?」
「・・・名前さん?」
「そうだけど、大丈夫?啓悟」
「大丈夫か大丈夫やなかというと大丈夫やなか」
「どっか怪我してるの?具合悪い?大丈夫?」

何だよ、この愛らしか生物は。
目の前にいる名前さんはちょこんとソファに座っている。ただいつもと違うのは全体のサイズ感だ。名前さんと目を合わせて話すには屈むしかない。屈めばやっと彼女と同じ視線になる。
落っこちそうなぐらい大きなまん丸の目。いつもよりか細くて小さな骨格。その身体を抱き締める。そうすれば小さくなった名前さんはいつもより幼い声で"いたいよ、けいご"と抵抗してくる。その抵抗は弱くて何よりそれが愛らしくて、一生離したくない。

「名前さん何でこがいにも小さくなっとる?」
「入院している患者さんがパニック起こしてね」
「それで幼くなってしまったんですね・・・」
「多分1日か2日で元に戻るらしいよ」

離したくない一心であったが、あまりにも名前さんが暴れるので致し方なく離した。その抵抗も犯罪級に愛らしくてもう俺は死にそうになった。お巡りさん犯人はこちらです。あ、でも捕まえるの俺ですよ。
渋々腕を離した名前さんの話によると、身体は幼稚園ぐらいの容姿になったらしい。しかも今着ている服が、出勤の時に着ていたTシャツ着ている。それがまたぶかぶかのワンピースになっていて愛らしくて仕方ない。

「師長さんが身体戻るまで休みにしてくれるって」
「小さい名前さんを俺は独り占め出来るの?」
「でも啓悟はホークスとしてお仕事しないと」
「いやです、俺には無理です。こげん愛らしか名前さんを1人にしとけん」
「啓悟キャラが可笑しくなってるよ」

名前さんは小さな手で俺の頭を撫でてくれる。その行為が俺の母性本能を擽られるようで、あぁもう名前さん!いつもとは別のドキドキを感じてきた。
自分でも自分のキャラクターがぶれているのは自覚している。だけどこの感情を抑えらる自信が全くない。名前さんとの子供はこんな感じに愛らしいに決まっている。やっぱり俺は女の子が欲しい。名前さんの遺伝子を全面的に持ち合わせた愛らしい子供になることを願いたい。


「とにかく今日は仕事してきて」
「その辺はサイドキックにお願いしてきました」
「嘘でしょ啓悟」
「嘘じゃないです」
「けいご?」

首を傾げて俺を疑う名前さん。
そんな目で俺を見ないで欲しい。罪悪感で胸を締め付けられてしまう。たぶん名前さんは分かってやっている。俺がいま小さくなった彼女に逆らえない。いや普段から逆らうつもりは微塵もないんだけども。
正直に今日の仕事をサイドキックに押し付けてきたことを伝える。そうすれば名前さんはやっぱりと言いながら笑った。本当名前さんは俺のことを分かっている。


「お家まで送ってくれる啓悟?」
「当たり前です」
「安全飛行でお願いしますよホークスくん」
「名前さんにホークスって言われるの懐かしい」
「ほら今からお仕事だし、お仕事中はホークスだもん」

名前さんは上司に帰宅する胸を伝えてくると言って1度休憩室から出ていった。名前さんが座っていたソファには彼女の鞄が置いてある。あまりにも名前さんの小さい容姿に注目しすぎて全く周りを見ていなかった。朝履いていたズボンも袋に入っており、もう何時でも帰れるように準備してある。
もしかして1人で家に帰ろうとしていたのか、こげん愛らしいか幼女が1人で?普通に誘拐されるだろう。俺だったら連れて帰る。名前さん危機感が無さ過ぎて俺は怒りそうだ。そんなことを考えていれば名前さんは帰ろうと言いながら休憩室に戻ってきた。

「名前さん1人で帰ろうとしたんですか?」
「違うよ、たぶん啓悟が飛んでくると思ったから」
「?ん、つまり」
「ホークスの事務所に連絡が行けば、仕事そっちのけで来るてましょ」

思った通りと笑った彼女は幼いのにいつもと同じ笑顔だった。何でそんな自信を持って俺に言うんだろう。俺の疑問を察したのか、名前は"啓悟って私のこと大好きでしょ"とにこにこしながら呟いた。もちろん正解です。

俺は名前さんのことが大好きで、ホークスとして立場を捨てでも名前さんと一緒にいたいと思ってしまう。だけどそんなことをすれば彼女はものすごく怒るだろう。今はまだ名前さんの彼氏である鷹見啓悟とプロヒーローのホークスを選ばないといけない日ではない。その日が来るまで俺は鷹見啓悟とホークスを決めずに明日を生きていくことにしよう。いつもより小さいこの手をぎゅっと握りしめて誓おう。


(個性事故で名前が幼女になる)


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