★ride on heaven's drive★

セオドールとカインはまるで放心したよう顔をして、ソファに座り、向かい合っていた。
長い沈黙の後、カインは口を開いた。
「そっちの方でも、念願叶った、というところか」
その刺々しく揶揄するような口調に、平素のセオドールだったのなら、嫌悪感を示したのだろうが、今のセオドールは大して感情を動かされなかった。
「貴様はそれを笑いに来たのか・・・?」
冷たく返される言葉。
「そうじゃない・・・」
自分自身の倦怠に沈みこむような口調で、カインは言った。
「ゼムスは、お前にこうさせるために、お前をヴァンパイアにしたのか?」
セオドールに尋ねるというよりかは、自分を納得させるために呟かれる。
「どうだろうな」
セオドールはカインの顔を盗み見た。
兄弟である自分とセシルの行為を咎めているのだろうか。
いや、そういう風には見えない。
しかし、この短い期間で、カインの顔は荒廃してしまったように見えた。
白い頬に怜悧で美しい瞳をしている青年。彼を見た人間はみんな、彼を美しいと言うだろう。
だが、その瞳の奥には何か廃墟なようなものを抱えているように見えた。
そのようにしてしまったのは、紛れもなく自分だ。
セオドールは少しの後悔の念をカインに向けたが、カインを鬱屈の檻に閉じ込められたことへ暗い満足感も覚えていた。
「・・・カイン・・・っ・・・」
気づまりな沈黙を破ろうと、セオドールは口を開いたが、それはすぐに塞がれてしまった。
目の前にカインが立ちふさがり、セオドールの座るソファへ身をかがめ、セオドールに口づけた。
「・・・ふっ・・・く、何をするっ」
差し入れた舌に噛みつかれ、血を滴らせながら、カインは笑った。
残忍な光がその瞳に輝いていた。
セオドールは、カインが初めてセシルを抱いた夜、カインが見せたあの邪悪な光を思い出していた。
憑きものが落ちてしまったかのように静かになってしまったカインに、再び破壊の光が灯ったことを、喜んでいる自分に気が付いた。
「よく似ているな」
セオドールの頬を撫で、こめかみへ手を差し込み、髪を梳く。
「セシルと同じすみれ色。この世ですみれ色の瞳を持つのはお前とセシルだけだろうな」
うっとりとした顔をして、カインが囁く。
この青年の力など、自分の比ではない、とセオドールは油断していた。
「・・・うっ・・・」
カインの青い瞳に囚われ、身動きができずにいると、こともあろうかカインはセオドールの眼球に舌を差し入れた。
ニヤリと笑うカインの顔は、あまりにも艶やかだった。
カインはセオドールの首筋に口づけて行く。
ブラウスのボタンをはずされ、素肌が露わになる。
セオドールはこんな状況を楽しんでいる自分に気づいていた。
セシルを抱いた夜から、すでにこの世の道徳も、人間のころ抱いていたプライドも、無意味なものに思えてならなかった。
カインの手は女のように繊細に、セオドールの胸を這いまわった。

手が下肢にまで到達する。そこを梳かれると、おのずと勃ち上がって行く。
早急なその手付き。
カインの細く長い指が、とうとう後ろにまで達した。
セオドールの肩は跳ねる。
「・・・よせ・・・」
侵入しようとするその手を止めようと、セオドールは身じろぎする。
「逃げようと思えば、できるだろう・・・?」
カインの長い髪が目の前で揺れている。
そうだ、逃げようと思えばできるはずだ。私は何かを期待しているのだろうか。
「・・・はぁっ・・・・はっ・・」
中を擦るように小刻みに指を動かされると、セオドールは熱い息を吐いた。
カインが自身をそこへ宛がう。
「・・・くっ・・・はあ・・・」
ゆっくりと侵略されていく。
支配されるのはゼムスだけで十分なはずだ。それなのに、なぜ、私は。
セオドールは整理しきれない感情のまま、カインの狼藉を許していた。
カインの酷薄な瞳に見降ろされる。
それは全て収まり切った。
まさか、この自分が、男に犯される日が来ようとは思わなかった。
それにしても、カインはこのように、セシルのことも犯したのだ。
「・・・ふぅ・・・は、あ・・・」
律動が始まる。
「く、あ・・・あ・・・はぁ・・・」
徐々に体が快楽を拾い始める。
カインの冷たい欲望が、セオドールを研ぎ澄ませて行く。
「あぁ・・は、あ、あぁ・・・」
無防備に喉元を晒しながら、セオドールは喘いだ。
カインはセオドールを追い詰めたつもりだった。
燃えるような目で殺意を向けてくることを期待していたが、セオドールは無邪気なほど快楽に従順だった。
次第にカインの方でも余裕がなくなってくる。
自分の上で腰をふるうカイン。自分を支配しようとしたはずが、カインの方が追い詰められているようにも見えた。
自分の倦怠をセオドールにぶつけてくるカイン。
その姿は自分に縋りついてくるようにも見えた。
「・・くっ・・・」
カインは低く呻くと、セオドールの中に欲望を放った。
セオドールも同時にイく。
自分に倒れ込んでくるカインの濡れた瞳が酷く扇情的だった。
やり場のない想いがカインの感情の許容範囲を超えて、溢れてしまっている。
今は好きにさせてやろう。
年長者らしい思いがセオドールを包む。
カインはセオドールに再び覆いかぶさり、律動を始めた。
窓から射し込んでくる月明かりが、カインの瞳を鋭く輝かせた。
光を放ったその瞳が泣いているように見える。
脆い心をなけなしのプライドで支えているカインの叫びを聞いているようだった。

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カイゴルソフト眼球ファックという新たな試み

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