★I’m so happy★

カインとセシルはこの渓谷で出会ってから、二人で戦いを斬りぬけて行った。
斬り込むカインをセシルがアシストする。
無尽蔵に湧いて出てくるのではないかと思えるくらい、敵の数は多かった。
この戦いに何の意味があるのかと思うことはあったが、二人は戦いの中で、お互いの存在が妙に心地良く、一撃一撃に阿吽の呼吸があることを感じていた。
踏み込むタイミング、背を向けていても、後ろで何をしているか、なぜか分かった。
相手の呼吸、鼓動、息遣いが手に取るように分かっていた。

「君に会っていなかったら」
セシルがカインに向かって微笑む。
「ここまで戦えなかった」
二人は戦いで乱れた呼吸を落ち着かせるために、灰色の谷に腰を下ろした。
「何と戦っているのかもわからないのに、敵の数は手に余るほど多くて」
カインは今まで倒した敵の数を思い出そうとした。しかし、正確な数はわからない。それほど戦っていた。
「そうだな。俺も同じだ」
カインは頷きながら言った。
「お前と一緒に戦うことは、心地良い」
カインがセシルを見つめる。
怜悧な青い瞳が柔らかく微笑む様子に、セシルは少し顔を赤らめた。
この瞳。前にも同じような気持ちになったことがあるような気がする、セシルは思った。
それは自分が持っているはずの思い出の中で、最も尊いものだったように思えてならなかった。
少しずつ、思いだして行く。
カインの元へ続く道を、少しずつ歩いていけるような気がして、セシルにとってこの戦いは幸福でもあった。
神妙な顔つきをして自分をまじまじと見ているセシルを、カインは可愛らしいと思ってしまった。
星の光を受けて輝く瞳は見る角度によって、色彩が変わって見えた。
珍しい色。すみれ色の瞳。

見つめ合う二人。
何か強大な引力に引き寄せられるように、二人の影は重なった。
唇が重なり合い、交り合う。
カインの体温。吐息。
それがセシルの中に入り込む。
カインの息吹を体に感じ、取り込む。セシルの体の内奥は、地下水がしみ出すように、限りない歓びで満たされていた。
セシルは自分の半身を取り戻したように感じていた。
なぜ、目の前のこの人と自分は、一つではないのだろう。
二つの違う肉体を持って対峙することが歯がゆかった。それほど、二人の魂は繋がり合い、心より、精神よりも深い所で溶け合っていた。
セシルな自分の頬を流れる冷たい流れで我に返った。
気付かないうちに涙を流していた。
あわてて、体を後ろに反らしながら叫ぶように言った。
「ごめん・・・!僕は、何を・・・」
自分の頬に手を当てながら、驚いて涙をぬぐう。
全ての感情を覆い隠すように、作り笑いを浮かべようとするセシルを、カインは無言で抱きしめた。
カインの鼓動を胸に感じると、セシルの涙は最早押さえようがなかった。


一時の休息の後、二人はまた戦いの中に身を置いた。
敵を倒して行く度に、カインの頭の中には、映像が流れていた。
自分が元居た世界の記憶。
溢れるばかりの光に照らされた森、そこに流れる川、そして、そびえたつ城。
銀竜の背中に乗り、空を駆けその風景を眺める自分。
見下ろす先には街があり、その大通りを歩く人影。その中に銀色を見つける。
竜と共に街へ降り立つ。
大きな竜の飛来に、彼は振り返った。
自分の姿を視界に入れると、彼は頬笑みながら駆け寄ってくる。
映像の中の自分が彼を呼んだ。
「セシル」
その光景は鮮やかにカインの頭を駆け巡った。セシル。
彼の名前はセシル。

「セシル」
砕け散った敵を見ながら、カインは呟いた。
セシルがはじかれた様にカインの方を振り返る。
「その名前は・・・?」
驚きと期待に見開かれた瞳。
「お前の名前だ」
カインからその名前を呼ばれた時、セシルの中には何か懐かしいものが広がっていた。
自分をこの世に結び付ける絆のようなもの。
不完全な自分の存在、体から欠けてしまったものを取り戻せたような感覚。
「セシル」
セシルは自分の名前を呟いた。
「ねぇ、もう一度、僕の名前を呼んで」
セシルはカインに懇願した。
すみれ色の瞳が不安そうに揺らめいている。
「セシル」
カインは真っ直ぐセシルを見つめ、頬笑みながら、名前を呼んだ。
その名前、それが持つ意味に確信を持って。
カインのその発音。確固たる意志の前に呼ばれた名前。
その響きにセシルは涙を流した。
「セシル」
カインはセシルの頬を流れる涙をぬぐい、セシルを抱きしめた。
セシルの柔らかな髪に手を差し込み、引き寄せると、二人は口付けを交わした。
絡まり合う舌。交り合う吐息。

きつく抱き合うと、二人は衝動的に、お互いの服を脱がせ始めた。
冷たい鎧に阻まれて、お互いの体温を感じられないのが歯がゆかった。
荒涼とした大地の上で、素肌を晒す。
暗い星空に浮かび上がるセシルの白い体は美しかった。
カインはその体をなぞる。
セシルはカインの手のひらが体を這いまわるのを感じ、心地良さに目を閉じた。
戦いの中で昂ぶったお互いの自身を擦りつけ合い、手で愛撫する。
「はぁ・・・」
セシルの耳元で、カインが低く呻いた。
その吐息交りの声に、セシルはぞくっとして、体を反らせた。
カインの大きな手がセシル自身を上下する。
「あぁっ」
セシルとカインは同時に果てた。

カインが更に手を伸ばし、その指が後ろの入り口に触れると、セシルの肩はぴくりと震えた。
伏せられた長い睫毛を震わせている。
あやすように、蕾を撫でる。
セシルは与えられるその感覚に、見覚えがあるような気がしていた。
ゆっくりと中に入ってくる指。
自分でも知らない場所を暴かれていく。
カインの繊細な指が、中で蠢く。混ぜるように探られると、セシルの腿は快楽に震え始めた。
指が感じる一点を掠める。
「んっ・・・」
セシルは目をつぶり、声を上げた。
そんなセシルの様子に、カインは柔らかく微笑む。
そこを撫でてやると、セシルの腰はくねり出した。
「はぁ・・・んん・・・あっ・・・」
もどかしいほどゆっくりと与えられる快楽には終わりが無かった。
セシルは心地良い波に揺られているような感覚に陥った。
「あぁ・・・イイ・・・」
とろけるような表情でカインに縋りつく。

切先を後孔に宛がう。カインの熱を当てられ、セシルの腰は震えた。
中に入ってくる。
その形を内壁で感じ取り、セシルのつま先は丸まった。
セシルの腕がカインの首にまわされる。
「ああっ」
完全に中に収めた時、セシルは感極まって、達してしまった。
中が激しく痙攣している。
カインはその強烈な快楽をどうにかやり過ごした。
セシルの息が整うと、腰を遣いだした。
「はっ・・・あっ・・・あん」
セシルのものはすぐに大きさを取り戻した。
カインが出入りするたびに、セシルは腰がとろけそうな程の快楽を感じていた。
「ふぅ・・・あぁ・・・あっ・・・」
顎を反らせて感じ入る。
「あぁ・・・」
「セシルッ」
強く突き入れられ、カインの熱が中に叩きつけられる。
同時にセシルも二度目の絶頂を感じた。
中に広がるカインの熱いもの。
達した時にカインを締め付け、より一層カインを感じてしまった。
あまりにも強い快楽に、セシルは一瞬気を失った。
汗で額に張りついた銀糸を掻きあげ、カインはセシルの輪郭をなぞった。
髪を撫でられるのを感じ、セシルが意識を取り戻す。
二人は頬笑み合い、深く口付けた。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

カインのテーマソングは、ラルクのI'm so happyです。
いちゃつきボルテージskyhighモードに突入
書いてて恥ずかしいくらいピュアラブ。

[ 12/14 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -