★KNOCKIN'ON HEAVEN'S DOOR★

ミストで倒れたセシルはバロン軍によって救助され、飛空挺でバロン城へ連れ戻された。
魔道士のカウンセリングを受け、兵士専用の病棟で眠っている。
カインは付き添いとして、同じ部屋のベッドに移っていた。
セシルのことを気遣いながらも、カインはミストの疲れからすぐに眠りに就いた。
真夜中、セシルがうなされる声で、カインは目を覚ました。
「うぅ・・・う・・・」
眉を寄せ、きつく目を閉じているセシル。
カインは心配になり、セシルのベッドヘッドまで歩み寄った。
「うあ・・・・だめ・・だ・・・」
セシルが弱弱しく頭を振った。
カインがセシルの額に手をやる。一瞬、セシルは落ち着いた。
しかし、突然、猛然と叫び声を上げ始めた。
「うわああああああぁ」
セシルは目を見開き、絶叫する。
「セシル!どうした!」
カインがセシルの肩を揺さぶった。
目を開いているものの、セシルに正常な意識はなかった。
押さえつけるカインの腕を振り払い、セシルが暴れ出す。
箍が外れてしまったように力を振るうセシルに、カインは弾き飛ばされた。
それでも押さえつけようとするカインに、セシルの拳が襲いかかる。
生身ではセシルに適わないと思い、兵舎に立てかけてある槍に手を伸ばす。
「静かに寝てろ!」
槍の背でセシルの後頭部を強打する。
そのショックでセシルは気絶した。

カインは魔道士を呼びに行った。最早、セシルを止められるのは魔道士の催眠しかない。
魔道士を連れて、兵舎へ戻ると、セシルは頭から血を流した姿で壁際に倒れていた。
窓ガラスに自らの頭を打ちつけていたのだ。
銀色の美しい髪が、血で汚れている。カインは、動揺し、セシルに駆け寄る。
魔道士は落ち着き払った姿で、悠然とセシルの前に立つと、心配するカインをよそに、セシルの頬を張り飛ばした。
「何をしているか」
「お前!」
カインが反発しようとする。
しかし、魔道士のきつい一撃で、セシルは己を取り戻した。
呆然としながら、自分の額から流れる血を拭う。
「僕は・・・何を・・・」
セシルの瞳に光が戻った。
「カイン・・・!」
セシルがカインを認識する。
「カイン、その顔!まさか、僕は・・・」
カインの目の周りは青あざとなり、腫れていた。
「僕は、なんてことを・・・」
死人のような顔色で、セシルがうろたえる。
カインはセシルに駆け寄り、自分の無事を伝えたかった。
しかし、すぐに魔道士が手をかざし、セシルの目を閉じさせた。
スリプルを唱えると、セシルは再び眠りに就いた。今度は呼吸の音も聞こえないくらいの深く、静かな眠りに就いているようだ。
割れたガラス越しに吹き込んでくる風を感じながら、カインはとりあえず一件落着したことに安堵した。

次の日、驚くべきことに、更にセシルには任務が与えられることとなった。
もうセシルの気力も体力も限界に来ている。それなのに、今度はファブールのクリスタルを持ち帰れ、との命令が出た。
今度の任務には、大事を取って、魔道士も同行するらしい。
任務の内容が伝えられた時、カインはセシルを見やった。セシルの瞳には何の表情も浮かんでいなかった。
任務にはカインも同行する。
カインはハイウィンド邸に戻ると、ホーリーランスを手にした。
今度こそ、セシルは終わりだ。
漠然と思った。
自分はこの槍で、セシルを・・・
カインはホーリーランスを握りしめた。
なぜ、こうなる前に止めることができなかった。
恐ろしい程の虚脱感を胸に、カインはホーリーランスを抱え、床に膝を着いた。

飛空挺がファブールに向かって出発する。
セシルは赤い翼の団員からは離れた別室に移され、ファブールへの到着を待っていた。
担架のような簡易ベッドに寝かされている。
その隣では、魔道士が控え、セシルが暴れ出しそうになったら、すぐに対応できるように準備をしていた。

ファブール上空に到着すると、魔道士はセシルに催眠を掛けた。
セシルは操り人形のように、ベッドから起き出した。
体が小刻みに震えている。
魔道士は残酷なほど強く催眠を掛けた。
ファブールのモンク僧との戦いはこれまで経験したどの戦よりも手強いものとなるだろう。
暗黒の力は戦いに飢えていた。
暗黒の気を充てられただけで、息絶えてしまう黒魔道士や農民たちとは違う。
本物の戦いの中に身を置ける。
セシルの中の暗黒は、大きな高揚感となって、セシルの瞳に力を与えた。
セシルの脳を暗黒の電気信号が駆け巡る。

カインはセシルの後ろに控えるような位置で、隊列を組んだ。
セシルは城内にひしめくモンク僧を次々に殺して行く。
モンク僧たちはどんどん城の奥へ追い詰められていった。
クリスタルルームへ通じる道、そこには最早数名の僧を残すのみとなった。
勝敗は既に着いている。
カインはセシルを止めようとした。
クリスタルを取りに行けば任務はそこで終わる。
セシルの肩に手を置く。
すると、セシルは猛然と振り返り、カインに鋭い太刀を浴びせた。
驚いたカインは素早く身を引き、セシルの攻撃を交わす。
「セシル!何をしている!」
セシルは何も言わずにモンク僧に襲いかかる。
一人のモンク僧が爆薬を体に身につけ、セシルに組みついた。
自爆して、セシルも巻き込む心算だ。ほどなくして、火薬には火が付いた。
僧の体が砕け散る。セシルも爆発をもろに体に浴び、よろける。
そこへ止めを刺そうと、もう一人のモンク僧が拳を振るう。
暗黒の鎧にはひびが入り、そこから血が噴き出す。
しかし、セシルの腕はモンク僧の拳をがっしりと掴みあげた。
これだけのダメージを与えられているのに、セシルはびくともしない。
パンチは止められたモンク僧は、圧倒的な力に動くことも出来ない。
セシルはそのまま力を込め、僧の腕を握り潰した。
「あああぁぁあああ」
僧が絶叫する。
もうセシルに自我がないことはわかっていた。
そのまま頭を掴まれ、粉砕された僧が絶命すると、セシルは振り返り、カインの方に体を向けた。
ここまでだ。
カインは決意した。
持っていたホーリーランスを強く握り、セシルと対峙する。
もっとはやく、止めてやればよかった。
ホーリーランスを構えられ、セシルは少し怯えたように体を反らした。
聖なる力はセシルには毒だった。
爆風で弾き飛ばされた兜がセシルの顔からはがれおちる。
黒い兜からは銀色の髪が零れた。
セシルのすみれ色の瞳が覗く。
カインはたじろいだ。しかし、セシルを止めなければいけない。
セシルがよろける。
ホーリーランスを持ち、カインが踏み込む。
その時、セシルが一瞬微笑んだ。
最後の自我が戻っていた。その刹那、セシルとカインの視線が混じり合う。
セシルはカインに訴えかけていた。
「カイン、僕を殺してくれ」
その意図を満身に感じ、カインの瞳からは涙が零れ落ちた。
ホーリーランスがセシルの心臓めがけて突き進む。
そこで、カインとセシルの体は眩しい光に包まれた。

カインが目を覚ました時、そこはファブールの城ではなかった。

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ようやく、ディシディア召喚。
当初考えていたのと全然違う話になってしまって、これから先どうしたらいいかわかりません。
本当は、セシルを憎んでいる設定のカインがセシルに「まだ戦えるだろ?」って暗示を掛けるはずだったんですけどね!
全部ゴルベーザの暗示になってしまったので、ディシディア召喚後の「カイン、本当は僕を憎んでいたんだね」ってセリフが使えないんですけど
しかも、ここでディシディア行くと、セシルはパラディンに変身できないはず・・・
あーどうしたらいいんだー

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