★ピアノを奏でるカイセシ★

カインとセシルはピアノを弾くとどんな感じになるのか想像して萌えた結果を中編のプレリュードに途中まで書いてみました。

もうカイセシネタも枯渇したわ・・・と思いつつ、バッハのイギリス組曲を400回位リピートしてたら、萌えパッションが蘇って来ました。

勝手な妄想設定としては、ダムシアンは古代ギリシャみたいな芸術の都で、バロンはナチスドイツみたいなイメージがあります。
ダムシアンの貴族が宮殿を大理石の彫刻で飾っていたころ、バロン人たちは顔に獣の血を塗って皮の腰巻と竹槍を装備して狩りに励んでいました。
独自文化がないバロンはダムシアンの文化輸入に夢中。

音楽家がバロンのために組曲を作曲した時は大喜び。
しかし、バロン人は芸術を理解できないだろうと踏んだ音楽家は、とりあえずの入門編みたいな子供でも練習すれば弾ける程度の曲しか作りませんでした。
左手はずっと伴奏、右手で簡単なメロディを弾くだけ。何度か繰り返して終了。
その曲は騎士教育の礼節やら嗜みやらを担当。
音楽の授業で習うため、バロン人は教育の中で必ず通る道。
騎士道とは主君に絶対服従をすること、女性を守ること、武芸を究めること。
チェスの駒みたいに王とクイーンを守るようにしつけられます。

セシルは特に音楽には興味がないので、必修科目だったので仕方なく練習しました。
教授の命令は、陛下の命令と同じだ、と言いながら。
楽譜をまるで法律書でもめくる様に、機械的に演奏。
楽しそうじゃないし、響いてくる音も月並み。
まあまあの点で卒業単位ゲット。
ギルバートは、音楽に対するバロン人のこういう態度が嫌でなりません。
独裁政権の象徴みたいな堅苦しくて命令的な音楽が気に入らないけど、作曲したのはダムシアンの高名な作曲家。
この作曲家はバロンをよく観察していて、それを音楽に表現しているなと思いながらもつまらなそうに視聴。

セシルとカインは生い立ち故に、陛下に逆らうことなんかできませんから。
むしろ、音楽とは上官の命令で奏でるものであり、戦いのリズムを刻むものであり、五線譜は法律のように思っていました。
間違った音を出すことは許されないし、メトロノーム通りに拍子をとらないことは行進の秩序を乱すこと、軍規を乱すことだと肝に銘じてピアノ弾く。

一方、カインはなんでも出来そうだから、芸術のこともナチュラルに理解できます。
音楽は戦場をトランペット持って駆け回るの下級陸兵隊員がやるもの、美術は宮廷画家が陛下の顔を描くこと、家庭科はメイドがやるもの、と半ば軽蔑しています。
自分は竜騎士だから槍術を磨けばよい、と思ってるんですけど、大貴族の懇親会みたいなのでダムシアンの音楽に触れます。
バロンにある音楽はあんなに堅苦しいのに、ダムシアンの音楽は自由。
特にバッハの対位法には感激。
主旋律が右手に左手に、目まぐるしく変わって、色んな音階から聞こえてくる曲を弾く技術を身につけます。

この頃から、カインとセシルの感性に差が出てきます。
二人とも陛下の操り人形みたいに生きてきたわけですけど。
セシルは自我を持った人形で、カインは自尊心を持った人形です。
セシルは自分で考えて行動するタイプなので、案外あっさり陛下の命令に背きます。
ピアノなんかどうでもいいし、正義よりも大事なこともあるし、何より世界の民を苦しめることは陛下であろうとも許せない、と思って離反。

しかし、カインは思いきって離反ができません。
カインは自分がバロンを代表する貴族であって、バロンの歴史と自分の家よりも唯一上位にいる王族の命令には逆らえません。
王を守るために、敵兵が攻め込んできたら、先祖代々受け継いで来た土地に自らの血を降り注ぐまで戦いぬく的な。

何があっても、自分はバロンの竜騎士と思っているんですけど、徐々に陛下の様子のおかしさに拍車がかかってくると、精神的なバランスを崩してきます。
バロン王を妄信することもできなければ、セシルのように離反することもできない。
自分の存在は不協和音。
バロンの音楽とダムシアンの音楽を弾き比べながら、ダムシアンの音楽では、どの鍵盤も主旋律を奏でる権利があって、完璧な調和の中に自分の居場所を持っているのに、バロンの音楽の中で、自分だけが居場所を持たないような疎外感を覚えます。

そんな中でゴルベーザに出会って、自分の隠れた欲望を解放する機会を与えられると、今まで何をこんなに我慢してきたんだろうと抑圧されてきた分、弾けっぷりがハンパない。
しかし、よくよく考えてみると、陛下はまだカインの意向を聞いてくれてたけど、ゴルベーザは自分を本当に唯の捨て駒くらいにしか思っていない。
結局、自分は陛下の下でも、ゴルベーザの下でも操り人形でしかないんだと思います。

槍を振るうということは、王を守り、その命令に従うこと。
槍を持つことで自由になると思っていましたが、そもそも槍とはカインの自由を枠づけて、自由を抑制するものです。
激しい生命を内に秘めながら、あくまでも王の駒という枠の中でしかカインは動くことができない。

中編プレリュードの続きの展開では、ギルセシがいちゃいちゃしているダムシアンに乗り込んで、カインはクリスタルを奪い取って、城に火を放ちます。
次々に倒れるダムシアンの兵士。負傷するギルバート。
そして、カインはダムシアンの聖堂にグランドピアノが置いてあることに気が付きます。
「それに触れるな・・・!」と激おこのギルバートをシカト。
鍵盤に指を置いたカインは、繊細な指の運び方な割に、力強く四方に響き渡る様な音で演奏。
バロンにこの対位法を完璧に展開できる者がいたのかとギルバートは驚きます。
凄まじくアップテンポなのに、打鍵は正確。
バロン人の規則順守の気質が演奏の中にも出ていて、絶対に楽譜を逸脱しない。
そもそも、この曲は感情を込めたり、テンポが少しでもずれるとつっかえちゃう。
自由へ憧れるけど、それが絶対に手に入らないことへの絶望を、それ自体が規則である五線譜に並べられた音符で表現するカイン。
ギルバートはもともと大嫌いなバロンの中で、一番憎んでいるのはカインだと思っていましたが、この演奏を聞いて、カインがただならぬ苦悩の中にいることを見てとって、アンナが殺されたこのダムシアンの一室でカインと向かい合っているにも関わらず、カインを許してしまう。
怪我をして血を流したまま茫然とするギルバートは、カインに向かって「あなたは随分苦しんでいるんですね」と声をかけるのですが、その時からカインは破滅する。
ちなみにカインが弾いたのは、バッハのパルティータ第2番。ロンドからカプリッチョへ息もつかない速さで演奏するマルタ・アルゲリッチ方式。

戦う人形だったセシルは自我を育てることで、枠を破って本来の自分を取り戻しましたが、カインは自尊心が膨張したことで破滅します。

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