★ローザに失墜させられるカイン★

ゴルベーザがローザを捕えて縛り上げたのを見てスーパーハイテンションになったカインに、凍てつく波動をかけるローザ妄想。
指一本動かさずに、カインを石化させるメデューサ・ローザ。

「こんなことはもうやめて」と被害者面をして、訴えるローザに冷笑を浴びせかけるカイン。
いつでも幸せそうに笑っているローザ。
自分には絶対に不幸など訪れるはずはないと信じて疑わない、品行方正で幸せな大多数に属しているローザを貶めてやると意気込むカインです。
ローザが今の今まで浸っていた幸福は、カインがローザとセシルの間で均衡を取っていたから維持できたのであって、自分が少しでも手を出せばすぐに瓦解してしまうものだと思い知らせてやろうと、ローザの前に立ちはだかります。

そして、ダムシアンのクリスタルを奪ったのはこの俺だ。俺はクリスタル全てを手に入れて、世界の秩序を手中に収めてやる的なことを言った時、今までいかにもか弱いヒロインの泣き顔を見せていたローザの顔が、突然氷のように凍りついて、目の焦点がなんとなく合わなくなり、それでいて何かを凝視しているような顔を向け、カインに諭します。

「クリスタルを手に入れて世界を征服するですって?それはゴルベーザが唆したことよね?あの男のことをどうして簡単に信じられるのかしら。都合がよすぎると思わなかったのかしら。世界の秩序を手に入れたあなたをゴルベーザが生かしておくとでも?
あなた、あの黒い甲冑の男が自分のところへ来て、その手を差し伸べた時、正直なところなんと思って?
自惚れていらしたんでしょう?人間って、自分にも何かの取り柄があるということは、すぐ信じたがるものですからね。
ゴルベーザが囁いた魔法の様な言葉を聞いた時、あなたは今まで抱いていた子供らしい夢を叶えられると思ったのでしょう?
自分が選ばれて生まれてきたという確信が、いよいよ証拠を見せたんだと思ったのでしょう?そうでしょう?」
小さい声で囁いているのに、ローザのその声はなぜかゾットの塔に反響して恐ろしく大きく響きます。

「自分の願望が他人の願望と一致し、自分の願いが他人のおかげで、すると叶うことなどあるものですか。人間はそれぞれ目的を持って生きていて、自分のことしか考えないのですよ。尤も、一番自分のことしか考えないあなたが、ついその点で行きすぎて、盲らになっていたのでしょうが」

ローザは口元に笑みを浮かべながら言います。

「あなたは歴史に例外があると思った。例外なんてありませんよ。人間に例外があると思った。例外なんてありませんよ。
この世には幸福の特権がないように、不幸の特権もないの。悲劇も無ければ、天才もいません。あなたの確信と夢の根拠は全部不合理なんです。
誰一人、人間は「選ばれて」なんかこの世に生れて来はしない。そんな存在があったら、自然が許しておきません。人間にとって、手厳しい教訓を見せてくれるでしょう。
あなたはそんな償いのいらない天才だと、自分を思って来たんでしょうね。何か人間世界の上に浮かんでいる一片の、悪意を含んだ美しい雲のように、自分を想像してきたんでしょうね」

と、三島由紀夫大先生の伝説の長台詞を一回も噛まずに言ったローザは、まばたき一つしないで、カインを見据えたまま、頬笑み続けます。
カインはこの言葉に逆上。
どうしたら、ローザのこの余裕の表情を崩すことができるのかと思案します。
縄を更にきつくするか、持っている槍で一突きにするか。しかし、例え槍で致命傷を与えたにしても、ローザは血にまみれた顔を堂々とこちらへ向けるだろうと思うと恐ろしくてなにもできません。

FF4界NO.1の精神力を誇るローザ様なら、どんな真理を突きつけられたとしても、きっと受け入れるんでしょうね。
美しい容貌を褒められても、白魔法の精度を称えられても、ローザが自惚れることなどないんでしょう。
カインはスーパーナルシストなので、人の言葉に一喜一憂しそうですが、表情には絶対出さなそうです。
セシルは他人が自分をどう思っているか全く気付かないタイプなので、何とも思わなそうです。綺麗ですねって直接言われても、男に綺麗って・・・そんなこと言われてもね・・・とちょっと引きそうです。

はぁーそれにしても、人間に例外があると思っている人って、沢山いますよね。
しかし、そういう人こそ扱いやすいとも思えます。お世辞だと絶対気付かないから。

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