★ Heels on the mirror ★

「ハァ・・・ハァ・・・」
肌をしっとりと濡らしたセシルは、バロン王の豪奢なシーツの海の中で身を横たえていた。
汗ばむ背中に陛下の手が滑る。
胡蝶骨を撫でていた指は、セシルのうなじを辿ると、背骨の数を数えるように滑って行った。
指先でのじれったい愛撫に身を震わせる。
尾てい骨をなぞり、白い双丘の間を滑る。
「あっ・・・」
意地悪な指が開かされた赤く色づいたところに触れる。
熱を持ったそこを撫でられると再び開いてしまいそうになる。
「あ・・・おやめください・・・へいか・・・んっ」
奥の奥で吐精を受け止めさせれた時、王陛下はセシルに「こぼすな」と命じた。
あまい痺れのわだかまる腰に鞭を打ち、セシルはそこを食い絞る。
撫でられて、ひくひくとうずき出すそこをからかうようにして、浅いところに指先を入れる。
体の中がくちゅりと音を立てる。
「だめっ・・・出ちゃう・・・」
自分の腕に爪を立て、快楽に耐えながら、セシルはそこをすぼめた。
「セシル」
その健気な様子に、王は満足しながら、呼びかけた。

「お前にプレゼントを用意したよ」
先程からチェストの上に乗っている箱。
何かあるとは思っていたが、王にのしかかられ、揺さぶられているうちにその存在を忘れていた。
リボンをほどくと、中には靴が入っていた。
「・・・陛下・・・」
女性でも履きこなせる者がいないのではないかと思うほど、ヒールの高い靴。
身につけたら、ほとんどつま先立ちになるのではないか。
黒いヒールは踵からどこまでも長く伸び、地面に着くころには針のように細くなっている。
「悦んでくれぬのか・・・?」
白い手のひらに、光沢のある黒い靴を乗せて、困惑したように眉を下げているセシルに向かって、王は悲しげな声を出した。
「いえ・・・ありがとうございます、陛下・・・」
初めて見たもので、驚いてしまいました。と取り繕う。
「身につけているところを見せておくれ」

そう言って、バロン王はセシルを抱え上げた。
王の間を抜け、鏡の間に入る。
セシルは靴を抱えながら、王の首に手を回し、落とされないようにしがみついていた。
舞踏会の時にだけ使われる鏡の間。
四面が磨かれた鏡で彩られているが、今日は床にも細長い鏡が設置されている。
床の鏡の手前でセシルは降ろされた。

王は設えてあるソファに腰を降ろす。
「御婦人方が夢中になっているファッションショーで、モデルはこのような細い道を着飾って歩くそうだ」
セシルはこの鏡の道を見た時に大方予想がついていた。
「今日はお前のために用意したよ、セシル」
こんな細く、高いヒールを履いて、歩けるのだろうか、とセシルが思案していると
「ショーには観客が必要だと思ってな。特別招待客を呼んである」

「入りなさい」
鏡の間に王の鋭い声が響く。
それを合図に、扉が開かれると、金色をなびかせる影が入ってきた。
「・・・ッ!・・・」
セシルの瞳が開かれる。
「お前の晴れ舞台を、親友にも見てもらいなさい」
裸身を晒しながら、床に腰を降ろしていたセシルはカインを見て驚きに打ちひしがれた。

カインの方でも、鏡の間に呼び出された時に何か良からぬことを王が企んでいることは想像していた。
扉を開けた時に、セシルが裸で蹲っているのを見て、眩暈を覚えた。
しかし、シャンデリアの蝋燭が照らす室内に浮かび上がる白は扇情的だった。
そのセシルが手のひらに何かを持っている。
カインは目を凝らした。

「さあ、用意しなさい」
ソファで悠々と脚を組みながら、王はセシルに命じる。
「・・・ハイ・・・」
消え入りそうな声で返事をすると、セシルは持っている靴を目の前に置いた。
―あれを履かせて、鏡の上を歩けというのか―
カインはバロン王の悪趣味に胸が悪くなった。
カインに背中を向けるセシルは意を決して立ち上がる。
座っていて隠れていた体のシルエットが浮かび上がった。
背中から腰にかけて、すっと細くなるくびれ、そして柔らかな丸みを帯びた尻。
そこから伸びる長い脚。
爪先を丸めるようにして靴を履く。
片足をヒールにつつみ、もう片方の脚を持ち上げた時、セシルはバランスを崩した。
「あっ・・・」
よろける。
転びはしなかったものの、片足を裸足のまま床に付けてしまった。

王はため息を吐きながら、
「カイン、手伝ってあげなさい」
と命じた。

カインは黙って、セシルの方へ歩を進める。
セシルは肩を震わせながら、カインの方へ手を伸ばした。
瞳は伏せられたまま、カインの方を向くことができない。
セシルが差し伸べた手を、カインが取る。
鎖骨から胸へかけて、バロン王の執拗な愛撫の跡が見られる。
きつく吸われて花弁が散るように彩られている。
胸の突起も赤く熟れて尖っていた。
セシルは気丈に振る舞っているつもりだが、カインに差し出す手は震えている。
腕を組むように、カインに体重を預けると、今度は靴を履いて立つことができた。
慣れないその靴。
腿に力を入れてバランスを取ると、形の良いヒップが高くなり、扇情的だ。

バロン王は顎でカインに合図を送る。
―手を離せ―
カインは何も言わずに従った。
セシルはそろそろと爪先を前に出し、鏡の上に踏み出す。
床の鏡にヒールが映る。
黒い踵が細く白いくるぶしに繋がっている。
それは鏡の効果で左右対称の像を結んだ。

もう一歩前に進む。
両脚が鏡の上に乗った時、カインはなぜ王が鏡の上を歩かせたがったのかを理解した。
ヒールから伸びる脚。
引きしまった白い脚が強調されている。
そしてその脚の付け根が、床に敷かれた鏡によってあからさまに晒されている。
歩いているセシルは自身の秘部が曝け出されていることを知りながらも、バランスを取ることに必死になって、隠すどころではない。
それを間近で見させられるカインは、見てはいけないと思いながらも目はくぎ付けになっていた。
歩くために脚を開くとそこが露わになる。

「あっ・・・」
磨かれた鏡にヒールが滑ってしまい、セシルは今度こそ倒れ込んだ。
鏡の上に尻もちを着く。
尻のライン、そしてヒクつく蕾からセシル自身が鏡の中でも像を結んでいる。
バロン王はニヤリと笑いながら、その様子を眺めている。
カインはあまりの仕打ちに、セシルに駆け寄って上着を着せてやりたいと思った。

転倒によってヒールの呪縛から逃れ、気が抜けてしまった。
「んっ・・あ・・・だめっ・・・」
喰い絞っていた蕾から力が抜けると、中から白濁が溢れて来た。
それが鏡に向かって垂れてくる様子が二方向から映しだされる。
何度も擦られて赤くなった皮膚が白でコーティングされる。
汁は内腿を濡らし、鏡を濡らす。
「いやっ」
その様子が鏡に大映しになっている気づき、セシルは目に涙を浮かべた。

「おやおや、はしたないぞ、セシル」
クックックとバロン王は笑いながら見物を続ける。
「もっと騎士らしく、優雅に歩けないのか・・・?」
目尻を赤く染めながら、立ち上がろうとする。
立ち上がるには鏡の上に手をつき、四つん這いになるしかない。
突き出した尻から白濁が零れる様子をバロン王は楽しんでいる。

カインはセシルを見ていられず、とうとう駆け寄って上着を被せた。
「陛下・・・!こんなッ・・・あんまりです」
セシルの肩を抱きながら、カインが王に向かって叫ぶ。
体の震えがカインの手のひらに伝わる。
今まで笑って見ていた王は、カインの行為に表情を変えた。

「カイン、お前にはそこに立って見ていろと言ったはずだ」
「しかしッ」
「大した成果も上げられない竜騎士団長は、こんな簡単な命令も果たせないのか?」
「ッ!」
ギリッと奥歯を噛みしめ、王を睨みつける。
「カイン、もういい。・・・陛下、申し訳ありません・・・」
カインが肩に掛けた上着を脱ぎながらセシルは言った。

再び立ち上がろうと身じろぎをする。
バロン王は大股でセシルに歩み寄り、片膝を着く。
そして腕を振り上げると、セシルの頬に振り下ろした。
パァンと鋭い音が響く。
「この売女!親友までたぶらかしおったか!」
平手打ちされて、セシルが倒れ込む。
王は体勢を崩したセシルの足首を掴むと、強引に脚を開かせた。
「何をっ・・・い、いやあッ」
仰向けに倒れたセシルの脚を大きく開くと、粗相をした蕾に指を突き入れる。
いきなり二本の指を奥まで入れられ、ぐちぐちと掻き回されてセシルは叫び声を上げた。
乱暴に荒らすようで、セシルの感じるところを小刻みにねぶっている。
「いやですッ・・あぁ、やめてぇ!はぁッ・・あぁん」
善い所を性急に刺激されて、セシルはあっという間に登り詰めてしまった。
その間も、王は入り口を広げるように二本の指を開き、中に出したものが流れ出てくるのを楽しんでいる。

「カイン、私はお前にそこに立って見ているようにと言ったのだ」
言葉を失ってしまったカインはその場に立ち尽くしている。
バロン王がローブを脱ぎ棄てると、セシルは本格的に泣き出した。
「陛下、もう・・・お許しを・・・」
しかし、自分のもので胸まで汚した姿で懇願しても、強請っているようにしか見えない。
はくはくと開閉し、綻んでしまったそこは、バロン王が来るのを待ち侘びている。
王がセシルの膝の裏に手を差し込み、腰が浮く位体を持ち上げると、切先を宛がった。
「陛下ぁ・・・んぅっ・・・」
そこは難なくバロン王を飲みこんでしまった。
「あっ・・・あっ・・・」
苦しい体勢で奥まで貫かれ、揺さぶられるとセシルは堪らず喘ぎだした。
ハイヒールを履いた爪先がピンと伸ばされている。
「んっ・・・ふぅっ・・・あぁ・・・」
自分の指を噛んで声が漏れないように耐えている。
「先程よりも良く締まるな・・・カインに見られて昂奮しているのか?」
「んぅっ・・・あぁっ」
胸を舐められ、もう片方を摘み上げられると、声が上がる。
ゆっくりと抜き差しをして、カインにセシルが自分のものだと刻みつけていたバロン王の動きが徐々に早くなっていく。
赤黒く太い肉がセシルを出入りする。
「あぁっ、ああ、あっ・・・いや、カイン、見ないでッ・・・あぁ」
泣きながら顔を隠そうとするセシルを掴みあげる。
カインの方を向かせ、背面座位で貫くと、再び脚を開かせた。
目一杯開かされて、喜んでいる蕾がカインの目にさらされる。
抜き差しされる度に、セシルの下腹がひくひくと痙攣する。
「あっ・・・ダメ、もう、やめて、許して、ああぁっ」
とうとうセシルが白濁を吹き上げた。
鋭い締め付けに王も達する。
ナカに浴びせかけられ、セシルが顎を仰け反らせて痙攣する。
「あ・・・あ・・・」
口の端から唾液を零し、唇を笑みの形に歪めている。
萎えた王が抜け出てくる。
開かされたそこからは、どろりと白濁が糸を引いた。
とめどなく涙が流れるその瞳は思考を放棄し、もはや焦点を結ばない。

「カイン、もう下がって良いぞ」
蒼白な顔をするカインの唇から一筋に血が流れる。
屈辱と憤怒で噛みしめたところから血が出てしまった。
王を殴って、セシルを奪い去りたい気持ちを押さえつけ、カインは踵を返した。

鏡の間の扉が閉められると、王は放心したセシルの頬を再び叩きつける。
「役目も果たさずに、眠ろうというのか?」
意識を呼びもどされたセシルは、未だに自分が鏡の上に磔にされていることを確認した。
そして、秘部に王の剛直を感じると泣き叫びそうになった。
悲鳴を上げるために開いた唇を王の大きな手で塞がれる。
「ふぅっ・・・うぅッ・・・」
くぐもった声が手のひらの中で反響する。
押さえつけられたまま、突き入れられる。
セシルの瞳には力なく揺さぶられる、ヒールを履かされた脚がいつまでも映っていた。

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