★Lacrimosa★

「こんな風に、君とまた向かい合えて良かった」
コテージの中で、セシルが寂しそうに笑いながら、カインに視線を向けた。
ゴルベーザの洗脳が解けたカインは、再びセシルのもとへ戻ってきた。
あまりに自然に迎え入れたセシルは、カインとそのことについて話すのを避けていた。
なぜ、ゴルベーザの傘下へ下ったのか。なぜ、自分を裏切ったのか。
口を開いてしまえば、カインを責め立てる言葉が溢れてしまいそうで、セシルは歯を食いしばって耐えていた。
カインもそれを察し、何も言わず、戦いの中でセシルを援護することで、報いようと思っていた。
ところが、野営の最中に、思いがけずセシルの口から、こんな言葉が出た。
カインは、ほとんど聞き取れないような声で、あぁ、すまなかった、と呟く。
カインが近づいてくると、セシルは瞳を伏せた。

カインの方でも、セシルに聞きたいことがたくさんあった。
自分が不在の時に、セシルはパラディンとなっていた。
暗黒騎士だった時の禍々しい雰囲気が嘘のように、神聖な光に包まれている。
カインはその姿を見て、安堵していた。
セシルの苦悩が取り除かれているように思えたからだ。
しかし、セシルはカインがいなくても、全ての物事を乗り越えられたという事実は、カインを孤独にしていた。

「また、ミシディアへ行ったよ」
ミシディア。セシルにとって、辛い思い出の場所だ。セシルはカイナッツォが化けた陛下に騙されて、ミシディアのクリスタルを強奪するように命令されていた。
「ミシディアの人々は僕のことを憎んでいた。飲み物に毒を盛られたり、トードをかけられたりしたよ」
セシルからふふっと笑いが零れる。
「それでも、ミシディアの長老は僕にチャンスを与えてくれた。試練を乗り超えられるように、危険な山を登るのに、弟子2人を連れて来てくれた」
月明かりがセシルを照らしている。
「パロムとポロムと言ってね、とても可愛い双子の姉弟だった。その子たちのおかげで、僕、パラディンになれたよ」
明るい声色で話すセシル。しかし、俯いているセシルの顔には銀色の髪が零れ落ちていて、その表情は見られない。

「まるで呪いが解けたようだった。パラディンになった僕を、ミシディアの人達は受け入れてくれた。暗黒って、呪いの一種だったのかな」
徐々に声が小さくなっていく。
「僕は一体、いつから騙されていたのだろう。ミシディアのクリスタルを奪いに行かされた時かな、暗黒騎士になれって言われた時からかな、それとも、陛下に初めて抱かれた時からかな」
「セシル・・・」
「僕はバロンのために、陛下のために、戦って死ぬと誓ったんだ。陛下のために・・・」
「セシルッ」
カインがセシルの肩に手をかけ、こちらを向かせる。
「何のために生きているのかわからなかった。陛下が僕を助けてくれた。だから、せめて、陛下のために生きようと思った。だけど、陛下は僕のことなんか見ていなかった」
セシルの瞳から涙が零れ落ちる。

セシルの頭の中には色々な映像がフラッシュバックしていた。
陛下が、時たま自分を呼び間違える。「セシリア」とそう言われた。
陛下が自分を見る目に、憎悪と諦念が漂っている。
ミシディアへ行くことを反対した自分を陛下は鞭打った。そして、ベイガンを呼ぶと、自分の服を脱がせた。
陛下のけたたましい笑い声。ベイガンの生温かい吐息が頬に掛る。
映像が切り替わる。カインが自分に槍を向ける。
槍が自分に突き刺さる。

「君だって・・・!カイン、君だって、また、ぼくを・・・」

―裏切るんだろう?―

それは言葉にならなかった。しかし、カインの心には痛いほど伝わっていた。
セシルが顔を手で覆う。

「もう生きていたくない」

肩を掴まれたセシルがカインの胸に倒れ込む。
涙の伝わる頬がカインの胸を濡らした。
セシルの肩が震えている。
カインは力いっぱいセシルを抱きしめた。
「すまなかった。もう二度と・・・ッ!」
カインが叫びに似た声を上げる。
しかし、セシルは素早く顔を上げると、カインに口づけた。
それに続く言葉を、セシルは聞きたくなかった。
セシルはカインの咥内に舌を滑り込ませる。
会話は終わった。
二人の舌が絡まり合う。
セシルはベッドにカインを押し倒す。
「はぁ・・・ん・・・ふっ・・・」
カインの手がセシルの髪を梳く。
カインの着ている物を、セシルが性急に脱がして行く。
二人は裸になった。
セシルは再びカインの上に乗ると、カインのものを口に咥えた。
苦しそうな表情で、頭を上下させる。
無理矢理喉の奥に咥えこんだ、その様子は痛々しい。
「セシル、無理するな・・・」
カインはセシルを慰めたかった。
セシルの目尻に新たに涙が浮かぶ。
カインのものから口を離すをセシルは、それを後孔に導いた。
「セシルッ・・・」
カインの制止を振り切り、セシルはカインの上に乗り上げる。
腰をおろして行く。
「うっ・・・・んッ・・・」
眉をきつく寄せながら、セシルがカインを飲みこむ。
セシルの腰をカインが支える。小刻みに震える腰。
腿の筋肉が緊張に痙攣している。
「あ・・・は・・・」
セシルが腰を揺らめかしながら、奥に咥えこむ。
その動きに痛みを感じていたカインは、急にナカが濡れたように感じた。
血の匂いがする。
「セシル、やめろ」
カインの伸ばした手をセシルは振り払う。
全て収めきると、セシルは蒼白な顔で息を吐いた。
腰を上下に動かし始める。
「くッ・・・・ん・・・」
小刻みに動く。
痛みに萎えてしまいそうな自分自身を擦り、快楽を引き出そうとする。
月明かりが浮かび上がらせたセシルの裸体は、あばらが浮き出て、痛々しいほど痩せていた。
「もういい、セシル」
カインがセシルの肩を押し、ベッドに縫い付けた。
繋がったまま、形勢が逆転する。
セシルの怯えた顔がそこにあった。
セシルの脚をカインが抱え込む。
ゆっくりと抜き差しする。
自身を掴んでいたセシルの手を外させると、カインはそれを手のひらに包み、梳き上げる。
「はぁ・・・ん・・・」
涙が幾筋も伝わっている頬にカインが唇を寄せた。
セシルの頬に紅が差す。
「んっ・・・あ・・・」
カインの指がセシルの乳首を撫でる。
セシルの体から力が抜けて行く。
「あ、はっ・・・カイン・・・あ・・・」
「セシル・・・・ふっ・・・」
セシルの冷たかった体が熱を帯びてきた。
「んふっ・・・あ、あん・・・あ・・・」
セシル自身を梳くカインの手。くちゅくちゅという水音が聞こえる。
カインがセシルの奥を突くと、セシルの内壁はキュッとカインを締め付けた。
―ようやく、いつものセシルだー
カインは思った。
「あ、カイン、もう・・あ・・・あぁっ」
セシルが達する。
強烈な締め付けに、カインもセシルの中に放つ。
「カイン・・・・」
混濁する意識の中で、セシルがカインを呼び掛ける。
その表情は笑っているようにも、泣いているようにも見えた。
セシルがベッドに沈みこむ。
カインはセシルから出て行き、セシルの下肢を拭うと、倒れ込んだセシルの頬を撫でた。
辛そうな顔をして眠っている。
目尻にとどまる涙を唇で拭うと、セシルを包み込むように抱きよせ、眠りについた。

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セシルに言わせたいセリフナンバー1は「もう生きていたくない」です
現パロで不完全燃焼したので、短編でリベンジ。

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