At a wedding #24
 

 イロモノ戦隊との対面を楽しみにしていたから、残りのお二人ともお会いできて満足です。
 塾講師の錦野さんが本当に普通のお兄さんで、フミタカさんの一番長いお友だちというのが意外だった。きっと隠された謎があるに違いない。いつか暴いてやる。
 平生さんは、納得の派手さでした。芸能人だって言われても疑わないくらいの美形。……と、フミタカさんに言ったら、アレは擬態だと説明されました。
 擬態ってなに……。何でも、その場その場で雰囲気を変えることができるらしく、素の顔を知ってるのは自分達くらいじゃないかって。イロモノ過ぎるよ!
 いつか詳しく聞いてみたいと思います……
 フミタカさんの元カノであるお姉様たちは、チクチクと彼を弄るのがお気に召されたらしい。
 曰く、「あのときはこんな表情見せなかったもの」らしいです。彼女たちの前ではカッコつけてたんだね、フミタカさん。
 これで旦那様公認になったから、あたしとのお出掛けをおおっぴらにするそうです。付き合っていた当時のあんなことやこんなこと、聞きたいようなそうでないような。
 あたしたちが仲良くしているとフミタカさんが本当に情けない顔をするので、お姉様がたはとっても楽しそうでした。
 もちろん、本当にイロイロを話すわけはないとわかってる。その辺りのルールはわきまえているひとたちだから、フミタカさんも困りながらもこの交流をやめさせようとはしないのだ。
 これくらいの意趣返しは許してほしいのよ、と言う彼女たちに、フミタカさんは全面降伏するしかなかった。
 どうしても仕事関係の招待客の割合が多くなってて、幼馴染みや学生時代の友人たちには肩身の狭い思いをさせちゃったかなと気がかりだったんだけど、なんとうちの弟妹がそっちに気を遣ってくれていてそれなりに楽しげにやっていた。
 涙出そうになったよおねえちゃん……!
 二次会は時間とろう。あと遼太と茜には特別におこづかいやろう。
 朝倉さまも、琴理さんも急なご招待だったけれど、楽しんでいただけたようでひと安心。よもや同じテーブルにいた人々が彼らのためのシークレットサービスだとは思うまい。
 嵯峨さんのところの人材ってどうなってるんだろ。
 唯一、悔やまれるのは同僚たちをフリーダムにしたことだ……。
 いや、皆さん余興を多いに楽しんでくださってましたけどね! あたしたちがお色直しのために退場したあとも、すごく盛り上がったようだけどね!
 こっちのダメージが半端なかったんです……。
 義理でもなんでも、呼んだらみんな集まって、様々なものを胸に秘めながらも祝ってくれる、そのことがとても幸せだなって思う。
 フミタカさんには、あたしが幸せにしてあげる! なんて、偉そうなこと宣言したし、もちろんするつもりだけれど、そのための力は、みんなにも貰ってるの。
 自分一人だけじゃない、周りで笑ってくれるみんながいるから、あたしも笑えるしフミタカさんを笑顔にだってできる。
 いつもは忘れちゃう当たり前に大事なことを確認できた、そんな時間になった。


 披露宴も最後のプログラムになり、フミタカさんの代表謝辞でお開きとなる。
「本日はお忙しい中、私たち二人のためにお集りいただき、ありがとうございます。ご来賓の皆様および御列席の皆様よりあたたかいお言葉を頂戴し、厚く御礼申し上げます」
 フミタカさんが頭を下げるのに合わせて、あたしも礼をする。
 右手にマイクを持ち、左手をあたしと繋いで、言葉が続けられる。
「私事ですが数年前まで、自分がたった一人で生きていると傲慢に思っていた時期がありました。
 他人を拒否し、ここにいる義父母や友人に心配をかけていたことも、理解せずにいた私の目を覚ましてくれたのが、妻の鈴鹿でした。彼女と出逢ったことで、たくさんの想いが自分の周りにあることを知りました」
 繋がれた手に力がこもる。
「気づけたこと、支えてくださった皆様がいること、全て幸いに思います」
 フミタカさんが、このときに何を話すかは聞いていなかったけれど、あんまりにもあたしが感じていたことと似ているので、ちょっと笑ってしまった。
 あたしだって、フミタカさんに出逢ってたくさんのことを知った。
 彼だけの言葉を聞いていると、あたしばかりが功労者みたいだけど、決してそんなことはない。お互い様の面が多々あるのだ。
 結婚は、ゴールではありません。しいていえば、最初の坂道を登りきったところかな。
 この先に見える道にも、きっと大なり小なりの山や谷がある。
 だけど、こうして二人、手を繋いで離れないで、進んでいく。
「まだ成長途中にある我々ですが、本日皆様から頂戴したお言葉を糧とし、明るく楽しい家庭を築いて参りたいと存じます。これからも、どうか変わらぬご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。――本日はまことに、ありがとうございました」
 もう一度、二人そろって頭を下げる。
 今日貰ったたくさんの祝いの言葉と、思いがこもったこの拍手を、忘れないでいよう。
 ずっと。


  
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