花風 #6
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果林へ

年賀状すら渡したことないのに、お前に手紙書くのって変な感じ。
まず最初に。
ごちそうさまでした。
いやいや怒んな?
物投げんなよ。
遺伝子とか形見とか体のいいこと言って、単に俺はお前を抱きたかっただけでした。
本望。
死ぬなんて理由でもなけりゃ、手を出せなかったっていうのが我ながらヘタレてるけど。
知ってたと思うけど、好きだ。
愛してる。
今さら言うなってお前は泣くだろうけど、
だって、俺、お前の泣き顔好きだし(笑)。
だから俺がいなくなって、思い切り泣いてくれたら嬉しい。
まだ先のあるお前に、俺を刻みこんで逝きたかった。
忘れられないように。
勝手でごめんな。
本当ならお前を誰にも渡したくなかったんだから、これくらいは許せ。
つまんない男にひっかかんなよ?
たまには思い出して泣いて。

じゃあ、ばいばい。

琢磨

P.S.
お前の『だいきらい』は反対の意味だってわかってるから安心しろ。

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 琢磨の遺品を整理していて、出てきた手紙。
 最後の最後まで意地悪だ。
 もういないくせに。
 何であたしを泣かすの。
 琢磨があたしを好きだなんて知ってたよ。
 どうしようもないのに。
 あんたを好きだなんて、自覚したくなかったのに。

 バカ琢磨。
 だいきらい。
 結局いなくなるなら普通、何も言わずに消えるのがあたしに対する愛情ってもんじゃないのよ。
 美しい思い出になれっつうの。
 バカバカ琢磨。
 だいきらい。

 塞き止めていたものが溢れて、咽を焼く。
 まだ、琢磨の匂いが残るベッドに突っ伏した。
 最後にあんたに抱かれた痕は、まだあたしの身体に残ってるのに、

 どうして?

「…………っ、……ぅ……ふっ……、ぁ、……ぅ〜〜ッ…………」

 もういない
 もういない
 もういない、

「っあ……、――――……ッ……!!」

 泣いても、
 呼んでも、

 琢磨は、

 ―――もう、いない。



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