*おにはうち?(オマケ)
 

 彼の名は近江。
 年齢は、数えてないからわからない、だそう。
 なんとこの鬼野郎、亡き両親公認のストーカーだった。
「最初になんぱとやらをしたのは明日香だぞ」
 鬼作の野菜タップリ栄養満点粥、というか雑炊を食べ終わり力を取り戻したあたしは、その言葉に噛みついた。
「いい加減なこと言うな! アンタが勝手に視界のすみっこに居たくせに!」
「豆」
「……は?」
 何故か微妙に拗ねた素振りを見せた近江が呟いた一言にあたしは首を捻る。
「あれはお前が一歳の頃か。遊び仲間だった兼英たちに子が出来たと言うから見に来たら――お前が突然霊力をこめた豆をぶつけてきたんだ」
 一歳て。いや、なぜ豆?
 そして父、これが遊び仲間ってどのような遊びをなさっていたのだ。
「あの時ほど驚いたことはなかったな。まだ赤子のくせに霊力はそこらの祓い師が束になろうと敵わぬほどで――兼英は苦労していた」
 遠い目をするな。
 そりゃちっちゃい頃は制御できずに色々やっちゃってた覚えはあるけども!
「それがどうしてあたしのストーカーに……」
「兼英が、十六になるまで明日香を娶るなと言うから、仕方なしに見守るついでにお前の周りの雑魚共を片付けていたんだ」
 雑魚ってナニ。
 違う、そんなことより、
 め? めと?
 眉を寄せて言葉の意味を考え続けるあたしを、近江が腕の中に引き寄せた。
 だーかーらーーー!
 ジタバタしても大人と子どもの体格差。あっさり膝の上に、チビッコのように後ろ向きに座らせられる。
「腹が減った」
「だったら何か食べてきたら? 人肉じゃない方向で。今アンタを狩る気力はないからね」
「いや、お前がいる」
 なにが?
 カプリと耳朶を甘噛みされて、身をすくめた。
 そのまま、近江の舌は首筋を滑りうなじを舐めて、いつの間にかパジャマの裾から侵入していた手が胸を包んで蠢く。
 なんで大人しくされるままになってるんだって?
 違うよ動けないんだよ!
 金縛ってるの!
 この変態、なんか術かけやがったー!!
「……っ、んやぁっ……」
 うう、やだ変な声が出るしっ……!
「あのときから――お前の魂に秘められた強さに魅せられたのだ。お前以外の巫女はいらん」
 だから巫女ってなに! てゆうか今は食べないって言ったのにー!
 食べてる! 食べて……って言うか吸うな! 舐めるなあー!
「巫女は巫女だ。我ら――鬼の花嫁」
 は。
 花、嫁??
「んっ、んんっ……!」
 肌を好き勝手に弄る手と唇に頭が痺れたような、身体の奥から何かが爆発するような感覚が広がって――、堪えきれずあげた悲鳴は近江の口の中に消えた。
 眠ったことで回復したはずの力はまた枯渇していて。
 どうやら近江の行為のせいだとわかったものの、あたしの意識はまたまどろみの中に落ちていって――やさしく額やこめかみに口付けられるのを感じていた。

 あのときから、って話によるとあたし赤ん坊じゃん。
 ロリコン通り越してやっぱり変態。
 とりあえず、目が覚めたあとも、また金色の瞳に出逢えるようならば。

 グーで殴って蹴っ飛ばす。
 躾は最初が肝心だものね。

 そう決意しながらあたしは再び目を閉じた。



※ちなみに、あくまでも味見です。
解禁は16歳……。
ガンバレ! 明日香っ!!

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