ツンデレ赤毛


「アリスはどうですか? 言葉遊び的な部分もあるから、難しい反面楽しいと思いますよ?」
『……せやな、アリスは恋愛要素ないし。不条理加減が激しくてツッコむ気にもならんし、ちょうどええかな?』

ロルフが数冊ある中から選んでくれた綺麗なカラーイラストが多い、子供向け《不思議の国のアリス》を受け取る。

 意外とちゃんと読んだことないし、この機会にじっくり読んだろかい。

『さんきゅーロルフ』
「いえいえ。エルンスト様に教えて頂かなければもっと手間取ったと思いますし、俺の手柄ではないですよ」

 むう……。それもそうやねんけど、素直に礼言う気分でもないんや。
 でもでも、あっちが礼儀しらずやからゆうて、こっちまで礼儀知らずになるんは大人げないかなーとも思うし。

アリスを抱えて棚の間から出てくると、ボクちゃんは変わらずもとの位置でつまらなさげに本を読んでいた。

 そういやコイツ、こんなところで何しとんねん?
 不機嫌顔でチラリとこちらを窺い見た彼に、あとで難癖つけられたらかなんし、一応言っとこうと口を開いた。

『おおきに。本見つかったわ』
 絵本を掲げて見せて、眉を潜めるのに英語でThankYouと言い直す。

ボクちゃんは、フン、と鼻でお笑いあそばされた。
予想してたけどムカつくわー。まあいいや、義理は果たしたぜ。

 ボクちゃんが居らんかったらここでうだうだ本読むんも良かったけど、どうも居座っとるみたいやし、危険はおかせへん。
 アレイストがやかましいし。

 ロルフと二人、用が済んだ図書室から出ようとして――もう一度、おい、と声を掛けられる。
 こりひんやっちゃな。

そのまま無視して通り過ぎる私に、かまわず彼は言い放った。

「お前、アレイストに選ばれたからといって図に乗るなよ。
 アイツにはもっと相応しい相手がいるんだ、ただ子どもを産める可能性が高いだけの女が、花嫁面をしてウロウロするな」

 ………ん?
 なんや、気のせいやろか。

隣のロルフに視線で問いかけると、私の疑惑を肯定するような面白がっている表情をして肩をすくめる。

 ちゅうことはや。

全く忌々しい、という顔を隠さず、ぶつぶつと私に対する“アレイストの妾”としての心得を並べ立てている。
(妾て、あとで覚えとれよ、このボクちゃんがっ)
 ていうか。

『男こじゅーと……』

 ぷふ、と吹き出しそうになるのを慌てて堪える。
 なんやこいつ、態度はツンケンしとるけど、アレイストが好きなんやん!

 アレやアレ、
 ツ ン デ レ !


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