理解のある私です。
「……いや、笑わせようと思っている訳じゃないんだけど……、うぁ、」
脇腹をくすぐっていたヤツは唐突に手を止め、渋い顔で私の上から退いた。
くすぐり攻撃に笑いすぎて息も絶え絶えになっていた私は、アレイストの視線の先を見て、ああと頷く。
腰からぶら下げた、銀のお守り。
アルジェイン(やっけ?)ええ子やな〜、親友甲斐のないおちゃらけ女や、なんだかんだ主至上主義の演技派家臣よかよっぽど頼りになるわぁ〜。
「ちゃんと離さず持ってるみたいだね……」
心なしか、ガクリと肩を落としてアレイストは呟く。
自分がそうせえ言うたんやないか。
そうか、セクハラにも対応できるんやな。この機会にぺたぺた女の子に触るクセ治したらええよ。
と私がニヤニヤしていると、悪あがきにもこんなことを言ってきた。
「ミツキ。俺と一緒のときは、それは離していていいと思うんだけど……?」
「いつも、持っているの、慣れた方がいいと、思うです。かさばるし」
セクハラ防止にもなるし。
自分で渡しておいて、そのせいでお触り出来へんようになったことを嘆くって、どんだけエロ思考なん。
つい、冷たい目で見てしまう。
アレかな、美女軍団を解散させてからヨッキューフマンになっとんの違うか。
たいしてさわり心地ええ身体をしているとも思えへんあたしにぺたぺたすんのは、そういう理由から違うか。
しゃあないな、アレイストも吸血鬼言うても健康で不健全な青少年やもんな。
身体だけのお付き合いは推奨せえへんけど、見て見ぬふりくらいはしたるで?
隠しとるつもりやろうけど、以前のアレイストがそういうお付き合いをしとったんはもうバレとるし。あたしと出来とるフリしてるから、最近はそういうコトしてないんやろ?
やっぱりヨッキューフマンやな。
あたしも中坊やないから、それくらいで軽蔑せえへんし、いや、まあ、前はフケツーとか言っとったけどシャレやし。
うん、だから、
「気にせず欲を発散してくるとよいですよ!」
「ミ、ミツキ……」
私がそう譲歩案を出すと、何故かアレイストはガクリと床に倒れ伏した。
なんでやねん。
更に何故かドアの向こうでアストリッドのバカ笑いが響き渡っていた。