思った以上にヤバいようです
『これ以上はあたしから勝手に言えない。どういう意味かは、アレイストが相応しい時期になったら話すと思うし』
だからそれまで気にしなくていい、と重くなった空気を振り払うかのように最後を明るく付け足したアストリッドに、もやもやしたものを胸に抱えつつ頷く。
スッキリしないけれど。
今の段階での深入りを私は無意識に避けた。
『ちゅうかさ、そんな大層なもんやったらホンマにあたしが持っててええの?』
話題転換のつもりでそう言うと、アストリッドは久々の爆弾投下をしてくれた。
『持ってないとミッキ攫われて、一生一族の手から逃げられないから。ジジイども、かなり本気だからね。アレイストにはあまりミッキが怯えるようなこと言うなって言われたけど、知らないのと知ってるのとで、覚悟が違うと思うから言っとく』
あたしも女だし、と謎の一言を付け加えて、次に言ったことは。
『ミッキが囚われたが最後、休む間もなく一族の子を孕まされて、死ぬまでそれが続くよ』
は……?
どゆこと?
私は耳にした言葉を理解したけど理解したくなくて、しかめ面になった。
『前例があるんだ。百年ほど前にいたイミューンの娘は、監禁されて、一族の男どもに犯され続けて子を生む前に狂って死んだ。
さすがに相手が日頃家畜と呼んで蔑んでいる人間でも外聞が悪いと思ったのかな、ハッキリした記録が残ってる訳じゃないけど。たぶん、そんな目にあったイミューンは一人や二人じゃないよ。
大半はそういうことを何とも思わない、頭がどうかしている奴らばかりだからね。一族の誇りってものを履き違えてる』
あえて淡々と、怖気がする内容をアストリッドは語った。
『……最悪やんか…』
がくりと膝を落として、私はベッドに突っ伏す。
はっきり言って、あちらさんがここまで気持ち悪い思考をしとるとは思ってもみなかった。
『躊躇ったらいいようにされるからね。使いどころを誤るな』
グリグリとあたしの頭を撫でるアスタは、慰めにならないようなことを言いよる。
使いどころて、やっぱり使用前提で持ってなあかんねんな……。
『しっかし、アレイストもとことんナメられたもんだよね。今までやる気なかったし、仕方ないけどさ』
これでアイツも腹くくるでしょ、とまたしても謎の発言。
なんの腹をくくるん?
訊いても、んふふ、と含み笑いをするだけ。
『アレイストがミッキに出逢えて良かったよ。あたしじゃ、支えきれなかったしね』
ベッドに寝転んだアスタは頬杖をついて私を見上げてくる。
まるきりお姉ちゃんみたいな顔をしていた。