賜物
温め直された食事を頂き、日本茶で一服。
ここに来たばかりの時はお茶のたびに、“どの茶葉に致しますか?”から始まり、いつ採れたやつだとか入れ方はとかミルクは何をお使いになられますか、といろいろいろいろ訊かれたものだが、最近は私の好みを覚えてくれたらしく、こちらにしますが宜しいですか、ぐらいしか訊かれない。
紅茶の種類なんか知らんし、美味しかったらええねん。
そういや紅茶が主だったのに、いつの間にか日本茶も混じってて、ご飯のあとは緑茶派な私を喜ばせてくれた。
わざわざ日本から取り寄せたらしい。申し訳ないやら、でもやはり時々は緑茶も飲みたくなるのでありがたく贅沢を受けている。
やっぱり宇治茶に限るわあ。
ちっちゃい冷蔵庫のなかにはキッチリ納豆や梅干しが切れることなく入っていて。いつの間にかチョコレートなんかも入れられてたりする。……餌付けされているような気がしないでもない。
部屋に備え付けられたポットで新たにお茶を入れ直し、お茶請けに梅干しをカジっていると、隣の部屋からアレイストの呼ぶ声。
そういや課題見てもらう約束してたっけ、とレポートを片手にぶら下げつつ移動した。
書斎へ行くと、アレイストがムツカシイ顔をしてテーブルに置かれた箱を見下ろしている。
「どうかした?」
私の問いに無言のまま手招きする彼の元へ行くと、その箱を差し出され、開けてみて、と促される。
え、何なん。
ビックリ箱ちゃうやろな。
アレイストの不審な様子にビビりながら、黒塗りの地に金の繊細な蔓草の装飾が施された箱に手を触れた。
直径で20センチくらいの長方形の飾り箱。
蓋に二つ付いた留め金をかちりと外すと、ベルベットの内布が張られたその中に、これまた白い布に包まれた棒のような物が現れる。
アレイストを窺うと、頷いたので手に取って。
ぐるぐる巻きの布を取り払うと出てきたものは、
『――ナイフ?』
刃の部分が革の鞘に納められた、15センチほどの長さの細い銀色の短剣だった。