招かれざる客たち・2
ひぃーーーーー!!!
なにすんねん、きしょい声出して人の首舐めんなや!
セクハラ吸血鬼の頭をしばこうとした私だったが、ふざけているでもなく真面目な顔をしているヤツに気づき、手が止まる。
――俺の言うことに合わせて――
そういやそんなこと言うてなかったか。とするとこのセクハラに合わせた方がええんか?
しかし合わせるてどうやって?
むむう、と私が悩んでる間に、オトナなハルさんがクスリと笑みを漏らし、硬直したその場の雰囲気を変える。
「安心して。若君の大事な女神様を横取りしようなんて思っていないよ。ここへ来たのは長老に対する義理みたいなものだからね」
そう言って軽く笑いながら、アレイストの腕に拘束状態の私に視線を合わせる。
「ベルンハルト」
咎めるようなアレイストの声に、ハルさんは苦笑して私から目を外した。
「――まあ、イミューンに対する興味がなかったわけでもないけれど。驚いたね、本当に我々の魅眼が効かないんだ」
私の肩を抱いたアレイストの手がピクリと反応する。
「と、いうか女の子にこんなに無反応の態度を取られるのも初めてだ。自信なくすなぁ、それとも、それだけ君と繋がりが深いということかな?」
揶揄するような口調に、オトナだと思ったハルさんの印象を少し修整。
分かっていてアレイストを挑発するとこは微妙に大人げない。
性格に問題ありな奴ばっかりか、ジャンシール一族。
「そんな人間に必死になって、みっともないと思わないのか、アレイスト。一族の誇り高き王ともあろうものが、いくらイミューンだからといって――」
鼻白んだ赤毛の言葉にアレイストが冷ややかな空気を醸し出す。
「エルンスト。間違えるな、俺は彼女がイミューンだから愛した訳ではない。ミツキがミツキだから惹かれたんだ」
赤毛坊っちゃんはエルンストちゅうねんな、似たような名前ばっかで混乱するわー。
ていうか今、アレイストきっしょいこと言わへんかった?
あ、ぁ、ああ、あい、とか何とか……、
おう、鳥肌たっとる、聞き間違いやないようやな。そうゆうこと真顔で言うから誤解がひろがるんやんけー。
一族の人らにはそう思わせといたほうがええちゅうのは分かっとるけども。
メイドさんらにもアレイストとあたしがムニャムニャだと思われてて、居心地悪いんや。
さっきからアレイストの言動に対してツッコミまくりたい気持ちを我慢して、私はひたすらお行儀よく薄笑いを浮かべてた。
あ〜、はよ帰らんかな、こいつら。お腹すいたし。
テーブルに置かれたお茶菓子に心奪われていた私は、赤毛が私に近づくのに気づいていなかった。