招かれざる客たち・1


「お邪魔しているよ、王」

と、全く邪魔だと思っていない態度で彼は言った。
不機嫌アレイストに肩を抱かれて誘導された先、客間にてソファーに偉そうに座る男が三人。
給仕しているメイドさんたちは、やっぱり緊張した様子だ。

「誰の許可を得て我が城へ入った?」

超俺様モードのアレイストはのっけから敵意を撒き散らし、それを感じてまたメイドさんたちがビクリとする。

 落ち着けゆうの、いくらジャンシールに忠誠誓っとる言うても、メイドさんらほとんど普通の人やねんからー、って何であたしがアレイスト側に立った注意せなあかんねん。
 あたしは一般人! 一般人やねんから!

「ちゃんと当主どのに許可は得ているよ?」
「俺たちだって好きで来ているんじゃないさ。長老命令じゃなきゃ、誰が……」

一番年長らしき金茶色頭の男が肩をすくめてアレイストの敵意を受け流しているのに、逆に赤毛の少年が不満丸出してアレイストに突っ掛かる。

 勝手に来といてどういう言い草やねん。
 やったら帰れば〜?

なんて私のツッコミが聞こえた訳ではないだろうけれど、同じようなタイミングでアレイストが短く吐き捨てる。

「ならば去れ」

ムッとして赤毛坊っちゃんが口をヘの字に曲げる。
まあまあ、と茶金髪は年長者の余裕なのか仲裁するように二人を宥めて、ふっと私に目を向けた。

「そちらが女神かい? 紹介してくれるかな」
「……ミツキ・アキハ。日本からの留学生だ。
 ミツキ、彼はベルンハルト・シジュール・デュア・ジャンシール。父方の従兄弟」

少なくとも彼は礼儀を弁えている。アレイストにお伺いを立てて私に話しかけてくるんだから。

「初めまして、ミス・アキハ。お見知りおきを」

 えーとこの人はベルンハルトさんベルンハルトさん、めんどくさい名前やなー、ハルさんでええか。

「初めまして、ミスター」

脳内で私に“ハルさん”などというのんきなあだ名をつけられたとも知らず、彼は紳士そのものの態度で私の手を取り口づけた。

 むずがゆー。

なんでこっちの男はいちいち手にチューすんねん、と私は常々思っていたのだが、アレイストに言わせると淑女に対する礼儀なので鷹揚に受けとけということなのだ。
かゆい手の甲をゴシゴシしたい気分をヘラリとした作り笑いに隠して、私はアレイストに寄り添う。

 変態セクハラ魔やけど、少なくともこの中では一番信頼できるコイツにくっついておくのが得策だろう。
 友達やしね。

 ちなみに、ハルさんも、ものごっつい美形。

姿が優れているのは彼ら一族の特性だというから、当然と言えば当然か。
まだ成長途中のアレイストと違い、成人している彼はどことなく強い男の色気を感じて微妙に腰が引ける。

 これでもうちょい歳いってくれとると、ばっちり好みやねんけどなー。

そんなことを考えながら目の前の人物を観察する。

 あ、緑の瞳やねんな。
 アレイストを始め、今まで会うたジャンシール関係のひと、青紫系やったし珍しいかも。
 ちゅうか、こんな色しとって、よお目ぇ見えとるなと未だに思ってまう。緑フィルターかかったり、薄く見えたりせんのやろか。

 いやうん、色がアレでも見え方は黒いあたしらと変わらんゆうのは分かっとるんやけどね?

「……ミツキ」
「わ?」

ハルさんを凝視したまま、くだらん思考に捕まっていた私の視界が大きな手のひらに塞がれる。

「俺の前で他の男をあまり見つめるな」

 アレイストの低い声が耳元で聞こえたかと思うと、ついでのように唇がうなじに押し当てられた。

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