留学生ミツキ


私、秋葉深月は、本来なら高校2年生。西日本の都会なんだか田舎なんだか、微妙な位置にある金のかかる私立校にウッカリ入学してしまった庶民の娘っ子だ。

その私が何故、東欧の名前も知らなかったような小国に留学しているのかと言うと――、

オイシイ罠にかかってしまったから、としか言いようがない。


 ――実験交換留学生募集――

そう書かれた張り紙が、校内の掲示板に貼り出されたのは高1の終わりごろ。
姉妹都市であるリストリア(どこだそれ)の学園と、再来年度から設立される交換留学制度のお試しに、数名の留学生を募集するというものだった。

英語は暗記と勘で勝負の五段階評価4、外国にも留学にも興味のなかった私が、どうしてそれに申し込んだのか。

それは、タダ、だったから。

留学費用、あちらでの滞在費生活費、そして一年間の授業料が全くゼロという条件に、金食い虫な私立校に入学して家の財政を圧迫していた私は、目が眩んでしまったのです。
ダメモトででっち上げ出した志望動機、面談、健康診断、細々したチェックをくぐり抜け、全校生徒から8人だけ選ばれたうちの1人に入った時は自分でもビックリしたけど。

私たち留学生に課せられたのは、月イチの日常報告と、2ヶ月ごとの学業進捗レポート提出。
私の場合だと、志望動機が『異文化コミュニケーション』と『英会話修得』なので、英語にて日常報告をすることがそのまま課題となる。

それだけ? て思うかもしれないけど、全く見知らぬ土地で違う人種の、言葉も通じない人々と四六時中接して、さらに通常の勉強もしなきゃいけないってかなりのストレス。
たぶん、それほど優秀でもない私が選ばれた一つには、神経が図太いっていうのもあるんじゃないかな。
現に、一緒に来たあとの7人のうち半分は、定期的にカウンセリングにかかってるみたいだし。

ええ、私は一回もカウンセラーのお世話になどなっておりませんよ。
悩んだり鬱になったりしてる暇はないっていうか。
ちょっとスキを見せると親切面した王子のヤロウが心配そうにやって来たりするので弱ってらんないっていうか。

 別の意味でストレスが溜まるんやっちゅうねん。
 ヤツがあたしにかまわなきゃ、ずいぶん気楽な留学生活なんやけどなぁ……。


*前目次次#
しおりを挟む
PC TOPmobile TOP
Copyright(c) 2007-2019 Mitsukisiki all rights reserved.

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -