男は30歳からです。(力説)
シラっと追及をかわしたロルフに不満げな視線を向けつつ、アレイストが私のノートを覗き込む。
『課題は進んでるかい? ミツキ』
『ぼちぼちなー。邪魔が入らんかったら締め切りには楽勝やわ』
何故か隣に密着してくるアレイストの脇腹に肘鉄を入れて牽制。
てゆうかスキあらばベタベタしてくるコイツをなんとかしてくれ。
とりあえずページの一番下まで英文を書きこんで、私はお茶を味わうことにする。
アレイストに邪魔されて続き出来へんねんもん。
ヒマそうに私のポニーテールの先っちょを弄ってくるアレイストの手を叩きながら、英会話せな! と思い出した私は改めて王子に尋ねた。
「さっき、ロルフに聞いてました。あなたたち、いつ出会いましたか」
「俺とロルが? リックに引き合わされたのが五歳くらいの時だったかな」
リックて誰え。
「リックはロルの父親。親父の執事だよ。彼の家系はずっとジャンシール本家に仕えているんだ」
うん、それはさっき聞いたけど――執・事とな!?
萌えワードを耳にした私はロルフに目を向ける。
じいぃ、と青年を観察し、脳内で歳を取らせて燕尾服なんて着せちゃって、妄想執事を作り上げていく。
ロルフの親父さんてことは四十から五十代のおじ様?
イイ………!!
「……こらミツキ。ロルを見て何ピンク色のオーラ出してるんだ、君は」
呆れたような不機嫌声のアレイストが私の目を塞いだ。
でも、ダ・イ・ジョ・ウ・ブ☆
すでにロルフモドキ執事リックおじ様は私の脳内にインプットされたあとだもん。いつでも取り出して萌えられるわ。
『ええ〜、そやかてロルフの親父さんなんやろ〜? さぞかしナイスミドルちゃうの〜? しかも執事様〜、いや〜ん、会うてみたい〜〜!!」
胸の前で指を組み、夢見る乙女モードになった私は身を捩る。
「……………オヤジ趣味…?」
恐々とアレイストがつぶやいた。
オヤジ好きじゃないよ、年上紳士が好きなだけだもん!
「アレイストのパパもけっこう好みです」
高そうなスーツ姿とか、変態セクハラ王子の親父さんとは思えへんくらいカッコエエねんもん。
ニュース画面でしか見たことないけど。直にお会いしたら鼻血でそうやわ〜。
そうそう、アストリッドの旦那さんも是非会うてみたいねん! アスタより16歳年上って話やし、超ストライクゾーン! 親友の旦那さんやけど、それとこれとは別なん!
「オヤジ……親父趣味だったのか、ミツキは……」
何故かガックリ気落ちしているアレイストの肩をロルフが励ますように叩く。
「どうりで簡単に靡かないと……、イキナリ歳はとれないし……どころか止まるだろ…? ……なにか手は……」
なにブツブツ言うとんねん。
別にええやん、おじ様好きでも〜。愛でるだけやもん。不倫はせえへんもん。