シモベの心得
『つまりロルフはアレイストの召し使いゆうことか?』
そういえば下僕がなんたらとか言ってたっけ。
思わず同情の目を向けてしまう。
大変やな……ロルフ。
あの変態セクハラ時々放火魔吸血鬼のお守りせなあかんなんて…。
「うわぁ、なんかしみじみと憐れみの視線で見られちゃってるー」
「……でも、みんなの前、普通の友だちしてました。何故?」
チャラい外見とは裏腹に、そこらのカフェ店員より慣れた優雅な手つきでお茶を淹れているロルフに私は重ねて尋ねる。
不思議に思ててん。
第三者の目があるときはタメ口やし、どっちかってゆうと荒い接し方しとるのに、他人がのうなった途端それなりに親しげやけど一線を引いとる感じがするん。
でもヨソヨソしいとかじゃなくて、なんちゅうかな、遠慮はないんやけど節度を保ちつつ側に居るて言うか……、
ときどき、なんも言わんでもアレイストの望むことを汲んで、先回りしてたりするのがスゴいなぁとか実は思てた。
アレイストも当然のような態度やし。
その辺がシモベてとこなんやろか。
キレイな金の唐草模様が入った白いカップに、ベストのタイミングで注がれた紅茶と、どこから取り出したのだか可愛らしくラッピングされた一口サイズのチョコレートが私の前に供される。
ジャンシール一味に囲われてから催促せずとも次々に持て成され、口に入るものと来たら極上品。そんな贅沢にも慣れてしまいそうになっている自分がコワイ。更に肥えそうな自分がヤバイ。
てゆうか、この応接室もどきにもすっかり慣れてしもてるしー。
自分の分の紅茶はマグカップに入れて、再び私の向かいに座ったロルフはコクリと首を捻った。
「俺がああいう態度なのは、アレクがヒトの間で浮かないようにするため、かな。放っておくと、あの人普通に王様だから、一般的な学園生活送れないんだ」
ふはは!
その発言に大いに納得した私はお茶を吹き出しそうになった。
わかるわかる、王様で俺様やもんな! そら素の態度やと、フォローが大変やわ。
「――誰が“何”だって?」
いつの間にか部屋に戻ってきていた俺様王様がロルフの後ろに仁王立ちしていてギョッとする。
ちょっとは気配出さんかい!
ロルフは全く動ぜずニコリと後ろを振り返り、お帰りなさいませ、と慇懃なご挨拶。
「えらく打ち解けたものだ。ミツキに余計な話はしてないだろうな?」
「今は貴方の傍にミッキ様がいらっしゃるから、俺の気苦労も少なくなって助かりますという話をしてたんですよ」
ソファーを立ちアレイストに席を譲る。
主人が帰ってきたらソファーには座ってられないということか。
ふむふむ。