単にお隣さんだと思ってました
狭い方が好きってどこまでも私は庶民。それでも、日本の実家の私と妹の部屋の数倍はある。
昨日の部屋は、たぶん客間だったんだろう。こっちの部屋を見てそう思った。
調度品は変わらず立派なんだけど、微妙に個性があって、白にベージュ、ピンクの薔薇の装飾で揃えられていた。
なんつうか、乙女部屋。可愛いんだけどむず痒い。
そしてやっぱり違和感のある小型の冷蔵庫とトースターを部屋のすみに設置され、お姫さまルーム台無しーみたいな。
あれはあっち、それはこっちと指図しているアレイストと、明らかに私の手持ち服より大量の衣服をメイドさんと一緒になってクローゼット内に詰め込んでいるアストリッドを横目に、私は部屋の奥にあるドアノブを押した。
続き部屋があるらしい。
ピョコリと頭を覗かせると、だだっ広い部屋の壁一面に並んだ本棚、どどーんと立派なデスク、落ち着いた色彩のソファ、などなどが目に入ってきて。
? 誰かの書斎及び応接室的な雰囲気があるんやけど。
私の部屋のドアからちょうど対角線上にある扉と、廊下側にある扉をハテナと見つめる。
コッチがあたしの部屋でー、アッチは?
「俺の部屋だよ」
気配なく背後に立ったアレイストが耳元でささやいた。
うひゃと小さく声を上げた私は耳を押さえて振り向く。
『今なんちゅうた?』
『 It is my room , 』
『え、あっちアレイストの部屋なん?』
てことはここは勉強部屋? い、違和感……。
「あっちはプライベートルームだけど、ミツキなら入ってもかまわないよ」
「はあ……」
王子のお部屋、やっぱりゴージャスなんやろか。
ちょこちょこ移動して、ちょっとだけ覗くと、意外とシンプルで必要以上のものはなく、居心地良さそうな感じだった。
モノトーンなところがアレイストっぽいな、と言うと、そう? と笑う。
――このときの私は、部屋と部屋とで私室が繋がっていることにあまり疑問を持ってはいなかった。
日本じゃ部屋を通って別の部屋に行くのなんて普通だったし。
アレイストの部屋が近くにあるんなら、迷子にならへんですむかー、なんて呑気に考えていたのだ。
普通思わへんて!
よ、夜の行き来がしやすいようにそういう造りになっとるなんて!
夫婦部屋て何やねんーーー!!
――私がそう叫ぶのは、もう少しあとのこととなる。