友情とか

 
「あはははは! あははははは!」

一緒に城に帰って来たアストリッドに『アレイストって見かけによらず友情に厚い男やってんな』とつぶやくと、何故か彼女はまたしても爆笑する。

 なんやねん。

もうええわ、と私は床で笑いながらのたうち回っているアストリッドを放置した。

「報われねえ、報われねえよアレイスト……!」
「余計なお世話だよ、アスタ」

床に転がる彼女を嫌そうな目で見ながら、アレイストが部屋に入ってくる。ゾロゾロ使用人さんたちを引き連れて。

「すまない、ミツキ。昨日落ち着いたばかりだけど、部屋を移ってもらえるかな」
「はい? よいけど、どうして?」
「この部屋だと俺の部屋から遠すぎて、いざというとき不便なんだ」

 いざというときを想定するて、かなんな〜。

話している間も、使用人さんたちは昨日運び込まれた私の荷物をまとめて運び出せるようにしている。

 ああっ、お手間とらせてすんません……!  ほんなら、最初からそっちにすりゃよかったのにー。

「自分があそこまで舐められているとは思わなかったからね。久々に我を忘れるくらい怒りに支配されてしまったよ」

 ニッコリ言うなや。
 あんだけ人をビビらせといて。

「ミツキのお蔭で被害が出なくて済んだよ、ありがとう」

王子スマイルを浮かべ指先で私の頬を撫でてくる。
え〜と、あそこでぶん殴らなかったらどのような被害がもたらされていたのですか。

 あ、やっぱいい、知りたくあらへん。
 やって、様子を見に行って戻ってきたアストリッド、何て言うたと思う?

「大丈夫、近くにいた数人が一時的に意識がなくなったくらいだった。ミッキ様様だよ、ホントに」

 ニコニコ笑いながら。
 ……って気絶者出しといて呑気なーー!!

 何でも、アレイストがいつもは抑えている一族としての気? とかゆうのにあてられて、意識を失ったりしたみたいなんやけど。

 やっぱりハタ迷惑やし。
 あたしが平気やったんは免疫持っとるからみたい。それでも、圧力みたいなんは感じた。

 アストリッドも動けんようになっとったのは、同族でもアレイストの方が上位の存在だから、本気を出されたら逆らうことが出来ない、らしい。

 ……説明されても、ふ〜んそうでっか、としか言い様のない自分が嫌だ。

 どうせ考えても分からんし。
 真剣に受け止めようとすると頭おかしなりそうやから、取りあえず聞くだけ聞いとけ。
 そんなもんなんや、と思っとけばええんや。

 よし、自分を言い聞かせ完了。


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