従兄弟たち
『アレイストとあたしが従兄弟だって話はしたよね。それから、婚姻による叔母甥の関係だってことも』
アストリッドはテーブルに紙を置いてサラサラと何事か書き出した。
アレイストと自分の名前のところに星印をつけて。
たくさんの名前を線で繋いで――、蜘蛛の巣のような図形が出来上がる。
『……家系図?』
『そ、あたしはアレイストの母方の叔父の妻だけど、血筋的に言うならコイツの父親の腹違いの姉の息子の妻の妹の子供なんだ。さっきのクリスはあたしから見ると、母の従兄弟の子供で、アレイストからすれば祖母の兄弟の子供。……ついてきてるー? ミッキ?』
『ごめんわからんさっぱわからん』
なんじゃこのややこいの!
ジャンシール一族の家系図を前に私は頭を抱える。
図で見ても耳で聞いてもわからん!
『……近親婚が多い上、長命による世代のズレでこういう縁戚関係が出来上がっているんだよ』
『だから、年齢の近い同族はまとめて従兄弟って言ってるわけ』
アストリッドはもう一度ペンを取って黒いバッテンを幾つかの名前に付けていく。
『ミツキが特に気をつけないとならないのはこいつらかな』
ちょっと待て!
“特に気をつけないと”ってなんやのん!
何で気ぃつけなあかんことあるんですかーー!
『できれば常に俺かアストリッドがついていた方がいいんだろうが、そうもいかないだろう? 学内では』
いやいやいや、そんな常にうっとうしいのはゴメンやし。でも。
『何なん、何なん、なんかヤバイことあんの!?』
ビクビクしながら訊く私を見て、二人して意味深に顔を見合わせる。
やめてぇー!
不安を煽るようなことせんといて――!!
『ミッキ、これ見ていて何か気付かない?』
『へ?』
促されて、アストリッドの指先にある家系図をもう一度見直す。
ほほう、アレイストお姉さんいるんやー。アスタは一人っ子……ええなー、うちは四人兄弟やし、日本に帰ったらやかましいことこの上ない……。