招かれざる客・3

 
「貴方がどう思おうと、チャンスは我々全員に与えられて然るべきです。言っておきますが、女神のことを僕に知らせたのは長老がたですよ。避けられるとは思われないように」

何を威張れることがあるのか、微妙に上から目線でアレイストに告げる。

 やっぱ何か気に入らん。

『おいクリスなんとか』

日本語だったけれど、自分が呼ばれたことに気付いたらしい男がこちらに目を向ける。

『あたしを無視してあたしの話をするっちゅうのはどうゆう礼儀や、顔洗って出直してこいアホンダラ。……ってコイツに言って、アスタ』

にやにや笑ってアストリッドが頷く。

 早いとこ英語を習得せんとタンカもきれんし面倒やなー。

改めて勉学に励む決意をしている横で、アスタが嫌みたっぷりに私が言った言葉を彼に伝える。

 ていうか、なんか余計な悪口まで付け足して言うとらんか。
 意味が伝わるんやったらかまへんけどさ。

鋭い眼で私を睨んだあと、金髪はあからさまに作った綺麗な笑顔を見せた。

「この二人がいる場所では僕に不利なようですね。またいずれ改めてご挨拶させて頂きますよ、女神どの」
貴公子みたいな礼をして、踵を返し去っていく。塩を撒きたい気分になった。

さて。
私は頭文字A二人組に向き直る。アストリッドは面白そうに、アレイストは何故か暗い顔で私を見ている。腰に手をあて一喝。

『どうゆうことや? あたしに話してへんことあるやろ! あたしの預かり知らんところで人を物のようにやり取りすんのはやめえ! ちゃっちゃと白状せんかい!!』

気まずげに目を逸らすアレイスト、アストリッドはそんな彼を窺ってから口を開いた。

「仕方ないよ。昨日の今日でアイツが出てくるんだ、もっと知られている可能性がある。あたしは万が一の時のため、ミツキにも話しておくべきだと思うよ」

 万が一ってなんやねん。
 恐ろしげなこと言うなや。

アレイストはじっと私を見て、またため息をついた。

「……これだけは言っておくよ。俺はミツキがイミューンだから好きになった訳じゃない。だから、誤解しないでくれ」

いつも自信満々な彼らしくなく、弱々しいと言って良いくらい心細げな声でアレイストは言った。

 何のハナシ?

重々しい雰囲気になった私たちを叩くような甲高い笑い声にビクリと肩が跳ねた。

ざわつくカフェテリア。
突然、止まっていた時間が動き出したような―――ふと気付く。今の今まで、周りがシンと静寂に包まれていたことに。

まるで私たちだけ切り離された場所にいたみたいだ。

たった今、目が覚めたような気分でキョロキョロしていると、アレイストが忌々しげに立ち上がる。

「ここじゃ話がしにくい。場所を移すよ」
「これ以上周りを黙らせておくのも疲れるしねぇー」

 ……ええと。
 つまり、静かやったんは、アンタさんらが何かしてはったというワケやね?

これだけの人数を操作する、出来る、その不可視の力に唖然として――私は首を振った。

 ……あんまり深く考えんとこ。



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