招かれざる客・1

 
顔を上げると、サラサラの金髪を肩に流した、これまたどこの芸能人さんですかと言いたくなる美形が私たちのテーブルを覗き込んでいた。
柔和な、中性的な美貌は背中に白い羽がないのが不思議なくらい。

こんなやつおったっけ、と新たに現れた美人に、うんざりしたため息が出そうになる。

 もうべっぴんはアレイストとアスタで充分やっちゅうねん。
 頼むしあたしの回りに美形コロニーを作るのはやめてくれんかな。

自分のみすぼらしさに、抱いてもおらんかったコンプレックスを持ちそうになるし。

そんな卑屈な思いは私には向かない。
謎の金髪青年を眉をひそめて見上げていると、その長い金のまつ毛に囲まれた、青みの強いすみれ色の瞳が私を見て笑みの形になった。
そして何故か隣に座るアレイストか緊張するのが感じられ。

ん、緊張――じゃないな、警戒?
怖いものナシの王子が何を警戒する必要があるのかと内心首を捻っていると、金髪天使にテーブルに乗せていた手を取られて。

「初めまして、我らが女神」

指先に口づけられた。

『げっ』

 慌ててひっこめる――前に、アレイストが容赦ない強さで彼の手を叩き落とす。
そのままキスされた手を引かれて、何故かアレイストの膝の上に。抗議しようにも、有無を言わさぬ強さで腰に腕が回ってくる。

 オイコラ、セクハラ禁止やて何べんも言うたやないか!

と、叫ぶはずだった私の口は、きつく鋭い刃物のような色をしたアレイストの顔を前にして閉ざされた。

 ……なんや、めっちゃ怒っとる?

「貴様らの女神ではない。“俺”の女神だ、勘違いするな」

温厚な外面はどこへやったのか、低く静かな恫喝を込めて、アレイストは青年に言う。
その眼差しで息の根だって止められそうなアレイストの視線を柔らかな微笑みひとつで受け流して、彼は言う。

「未だ“命約(ディスディール)”を結ばれていない以上、一族の誰にだって権利はあるのでは?」

 またディスなんとか。

「……俺のものを掠め取ろうというのか、いい度胸だな」
「貴方が見つけたからといって、選ぶ権利は彼女にもあるでしょう」
「舐められたものだ。その口ぶりでは俺の意に逆らおうとする輩はお前だけではないらしい」

頭の上でやり取りされる、どう考えても私に関係がありそうなのに私を無視して進められる会話に苛立ちが積もっていく。

どんどん冷たくなるアレイストの声音も気に入らなかったし、私のことを口にしながら私を一切見ていない金髪も気に入らなかった。

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