疲労困憊カフェテリア
一夜明けて。
私を待っていたのは、ぐったりする日常だった。
『どうよミッキ、新婚生活は』
『どつくでアスタ。とっとと帰りやがって』
だってあたし寮監だも〜ん、とケラケラ笑う、ジャンシール一味の一員を睨む。
何が新婚や、アホンダラ。
ウヤムヤのままアレイストの城に移って1日。既に私は疲れ果てていた。
『何とかするよって聞いたときに嫌な予感はしとってんや、何でちゃんと追求せえへんかったんやあたしのアホ、アレイストの思考が十分おかしいことは知っとったんにー』
ぶつぶつ恨み言をつぶやいている私の周りにはポッカリと空間が出来ている。
離れたところでお話をしている人々が、全員私の噂話をしているような気がするのは自意識過剰の被害妄想だろうか。
ただでさえ、敬遠されがちだったというのにさらにハブられている。
どこもかしこも居心地が悪いことこの上ない。
『今まであたしをええ使いぱしりやと思ってた節のある教授まで手のひら返したみたいに丁重に話しかけてくるってどないやねん。そんなにジャンシールが怖いんかっ』
「そりゃだって、昔からこの国の……なんだっけ、ウラ……『裏番』? だもん。影の王族に逆らわないよう遺伝子に刻み込まれてるんだよ」
そんな遺伝子は洗ってキレイにしてしまえ。
『今まであたしを小猿扱いしてたお偉い奴らまでイキナリにこやかにやたら話しかけてくるし。一般生徒は遠巻きやし。もういややー! 日本に帰るーーー!!』
『いま帰ったら授業料免除にならないよ』
優雅に私の隣に許可も得ず座った男を、刺すような瞳で見てやった。
諸悪の根元め………! なんやそのパフェ、そんなんであたしの機嫌が取れる思たら大間違いやで。頂くけど。
『近寄んなアホンダラ。更にあたしをマズイ立場に追いやるつもりかい』
どうやら奢りらしいデザートだけ引き寄せ、しっしっ、と犬を追い払う仕草をする私を楽しげに見つめて彼は逆に顔を寄せてくる。
当然後退する私。ポニーテールにした髪の先を引っ張り、つれないな、とアレイストは甘く微笑んで。
その笑顔にぞわりと背筋が粟立った。
『君のそばにいたいと思うのは当然のことだろう? My Sweet ,』
んぎゃ―――――!!!
キモいキモいキモいッッ!!!
なにがすいーとや、鳥肌立つようなこと言うなこの変態!!
「……愛情を表して何故変態呼ばわりされるんだろう。わかるかい、アストリッド」
わからんわ! アンタはバカ笑いし過ぎやっちゅうねん、アスタ!
テーブルをバンバン叩いて笑い死にしそうになっているアストリッドを呆れて眺めているスキに、髪の先に口づけられた。
キャア、と周りから悲鳴が上がる。
っこンの変態セクハラ吸血鬼め―――!!