再び、袋の鼠。
…………。
『どういうことやーーー! 貴様日本語話しとるやん、めちゃめちゃ流暢やないかッッ!!』
襟首を引っ掴み、怒鳴った。
状況についていくのにいっぱいいっぱいでスルーしてたけど、アレイストと日本語まじりで会話しとったし!
『ミッキ、遅ー』
『アストリッドが話せて、俺が話せないと思う?』
クス、と花が舞いそうな美しい笑みを浮かべた男に殺意を覚える。
ちゅうことはちゅうことは、や!
『ずっとあたしが愚痴っとんの分かっとったんやないかッ! アンタ影で笑っとったな!? ほくそ笑んどったなー!?』
ガクガク揺さぶるが堪えた様子はなく、アレイストは『ミツキ、落ち着こうよ被害妄想だよ』と笑う。
嘘つけ!
完っ全にこのコンビあたしを玩具にしとるし!
恥ずかしいことにまだアレイストの膝に抱えられていた私はそのままヤツに頭突きをかまし、腕の拘束がゆるんだスキに逃げてやった。
顎を押さえて痛みに耐えているアレイストと爆笑しているアストリッドに捨て台詞を投げ、扉へ向かう。
『あたしはヒマやあらへんのや、進級とタダ学費がかかっとるし血吸い魔一族と遊んどる場合やないん! Entrance, where!?』
何故か素早く部屋の出入り口をその体で塞ぐメイドさんや使用人の方々を睨み付ける。
なんのつもりやねんっ。
プルプル首を振る皆さんは私の背後に視線をやって、動く様子はない。
ちっ、と舌打ちした私は、席を立ちゆっくりとこちらへ近づいてくる男をねめつけた。
「……ミツキ。俺たち一族の事情を知って、帰れると思うの?」
あくまでもアレイストは穏やかに優しく言葉を紡ぐ。
気を失う前と同じような状況に、嫌な汗が流れたけど、こんなときにも負けず嫌いな私はキッパリと言い返してしまう。
『そんなもんそっちが勝手に話したんやないか。知られたないんやったらキッチリ最初から最後までシラ切って黙っとけ』
夢だったんだよー、とか誤魔化してくれたほうがナンボかよかったっつうの。
……まあ、その場合はしつこく問い質す私がいたような気がするけど。
『ヘタに誤魔化してもミツキは俺たちを質問攻めにしたんじゃないかな?』
アレイストもそう思ったらしく、顎に指をあて考えるようなポーズをとる。
くそ、読まれとるし。