もしやピンチか


真っ赤になってみのむしになる私が余程アレイストのツボに入ったらしく、ヤツはバカ笑いをしている。

 むかつくー。
 いつまで笑っとんねん。
 頭のネジどっか落としてきたんちゃうんか。

声を立てて笑い転げるアレイスト、というのが珍獣並みに珍しくてジイィ、と見つめていると、開きっぱなしの扉の向こう側で困った様子で立ちすくんでいる人に気がついた。
笑うアレイストをビックリしたように見ている、シンプルな濃紺のワンピースにエプロン、といった格好からして、メイドさんが。

生メイドに感動しつつ、まだぶるぶる肩を震わせているアレイストに注意を促す。

『そこのアホ、メイドさん困ったはるやろ、退いたりや』

私の言葉に、今気がついたというふうに顔を上げて、アレイストは戸口から離れこちらへやって来る。

 いや、こっちには来んでエエから!

そんな私の心の声が聞こえたのか、アレイストはベッドに座り上掛けにくるまった私の側に手を突いて、よく眠れた? と、さも優しげに微笑み顔を覗き込んでくる。私の額に被った髪を長い指先で払い、そのまま頬を撫でて。

 いやーッ変態いぃ近い近い何でいちいち近いのっ!?

ヘタに身動きするとピラピラのスケスケをまたご披露してしまうので、私は固まったままヤツのセクハラを受けるハメになった。

「どうしたの、ミツキ? 顔が赤いね、熱でもあるのかな?」

絶対分かってて言ってるアレイストが、額を合わせようとしやがって私は慌てて避ける。

「ないないない! 熱ない、と言うか近寄るなです!」

芋虫のように上掛けにくるまったまま後ろへ下がる、アレイストが妖しく笑ってにじり寄る、

「前から思っていたけどミツキ。君の片言英語、すごく可愛くていいよね」

 いいって何がや―――――!

クスクス甘く耳に響く声で笑いながら、アレイストは私の髪を撫でるようにすいてくる。

 おかしいし!
 コイツおかしくなりよった!!


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