猫を噛んだ鼠は



お腹がすいて目覚めるほど切ないことはない。

ぐうぐうと飢餓を訴える胃に負けて、私はしぶしぶ眠りから覚める。
たしか冷蔵庫に冷凍した食パンと納豆あったよな〜、チーズ乗っけてトーストでもするか……。
なんて考えながら、空腹すぎて吐き気までする、とてつもなくダルい身体に気合いを入れて、目を開けた。

そして。

『どこやねん』

見知らぬ部屋の見知らぬベッドに横たわっていた自分を発見したのだった。

いわゆる天蓋つきベッド。
三人くらい余裕で眠れそうな広さがあって、シーツはサラサラ上掛けはフンワリ暖かい(おそらくっていうか確実に羽毛100%)、オマケに私はお姫さまあるいは新妻みたいなピラピラしたナイティを着ている。

 ……お腹が冷えるっちゅうの、こんなん着て寝たら。

いやいや問題はそこではない。

天蓋ベッドの外はこれまた広すぎる部屋。
こんなのテレビの中でしか見たことないよ、といういちいちデコラティブかつビューティフルな高級家具、電球を換えるのも苦労しそうな高い天井には、え、シャンデリア? なんでシャンデリア。

まったくこんなところにいる自分が理解できなくて、私はベッドから抜け出すことにする。
床にそろりと足を着くと、フカッとした絨毯。ベッドの脇に揃えてあったルームシューズを拝借して(何故かピッタリ)、そろそろと辺りを窺う。

だからココドコ?

下手に触って傷でもつけたら恐ろしすぎる家具から距離を取りつつ、窓へ向かってみる。飾り窓かと思ったけれど、ちゃんと開いた。首を出して外を覗き込む。

『せやからココどこッ!!』

私がいたのは地上から遠く離れた高い場所にある部屋、らしかった。

んなことより問題は。
窓から首をめぐらせて、見渡せる範囲で言うならば、ここは。

城だ。
鬱蒼とした森に囲まれた、お城――。

何故イキナリ自分がこんなメルヘンかつミステリーな状況に置かれているのか、空腹のせいで頭が回らないなりに考える。

考える。
……………。

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