反撃
ゆっくりと、首筋に口付ける。
その滑らかな皮膚に牙を刺し込もうとした瞬間―――、
バシン、と激しい電流が身体を駆け巡り、俺は膝を落とした。全身が痺れて、呻く。
『ザマ見ぃ! このセクハラ吸血鬼! 変態! 女の敵ッ!!』
ミツキが元気に叫んで、動けない俺の横をすり抜けていく。一瞬の衝撃からすぐに身体は回復したが、俺は呆然として、動けなかった。
思いもしないミツキの反撃に、
いつも通りの彼女の罵りに、
まさか、
と思う心が、俺の思考を停止させていたのだ。
まさか、
まさか、
まさか、
そうなのか、女神?
ミツキが、
俺の運命なのか―――?
俺が停止していたのはほんの一呼吸の間だった。
逃げようとしていたミツキに一瞬で追いすがり、開きかけた扉を手のひらで叩きつけるように閉じた。同じ手はくわないよう、彼女の手を捻り上げ、その物体を手放させ。
ガツン、と硬い音を立てて落ちる手のひらサイズの黒い物体。
……スタンガン? 誰がこんなものをミツキに、と思ってから、一人しかいないことを悟る。銀のナイフじゃなかっただけ、マシか。
落ちたスタンガンを蹴って手の届かないところへやる。
ジタバタ暴れるミツキを腕に閉じ込めて逃げられないようにしっかりと拘束すると、声を上げて文句を言ってくる。
か弱い女の子は普通ここまで元気に暴れないと思うんだけど。
それよりも確かめなければ。
頤を掴み、ミツキの顔を上に向け、息のかかる近さで、瞳を合わせた。
魂を絡めとる一族の力を込めて。
だが、赤い瞳で見つめてもミツキの意志は消えることなく、強気に俺を睨み付けてくるから。
ミツキが免疫保持者なのだと確信した。
その事実が、馬鹿みたいな幸せを俺に与える。