叫び
一瞬呆けた相手の胸に拳を叩き込む。もちろん、容赦なく。
かは、と呼気に混じる血を無視し、よろめいた身体に手刀を落とす。
意識を失ったクロウドの身体を掴み、壁際に投げた。
近くにいた部下に、「色々情報を握ってそうだから厳重に他のやつらと隔離して閉じ込めておけ」と命ずる。
どうもムルデンの阿呆とは違う目的があったようだからな。
意識がないまま拘束されたクロウドが運ばれていくのを見つつ、意識を伸ばして片付きつつある領域内の戦闘状況を探る。
――そして、迂闊にもその時に気付いた。
アルジェインの気配に。
アレが、ミツキの近くにある。
それが意味することは――あの女が現れていたということか。
ミツキの部屋の前は腕に覚えのある使用人たちが詰めていたはず。こちら側から侵入した様子はない。
と言うことは――外側の窓から?
実際は三階だが五階分の高さがあるのに?
常軌を逸しているぞ、狩人。
或いはクロウドが俺を相手にするのは陽動のうちだったのかもしれない。リリエラはムルデン奪還に動くと思っていた俺の読み違いに舌打ちする。
“銀”があるならアストリッドが動けない。今のロルフに狩人の相手はキツイ。
焼けるような焦燥にミツキの部屋へ向かおうとしたとき――
『そんなん、反則やんかーーー!!』
悲鳴なのかツッコミなのか判断がつきがたい彼女の声と同時に、扉が勢いよく開いて人影が転がり出てきた。
―――ミツキ。