合流


「――ミツキ!」

焦ったようなアレイストの声が、私の耳朶を叩く。

私たち四人が狭い部屋の中ですったもんだしてる間に、扉の外の戦闘はほぼ終わりを迎えていたらしい。
長い廊下のあちらこちらで敵をふん縛ったり、怪我の手当てをしていた使用人さんたちが唖然と私を見た。
外に転がり出た私はすぐさま体勢を立て直して走り出す。

『ごめんみんな、退いてー! 特に一族の血ぃ持ってるヒト! 危ないのがあとから来るし、逃げといてや!』

迫るリーリィの気配。
それに気づいた人が、武器を持ち直し構えるのを目の端に捉え、唇を噛む。

 あかん、みんなあたしを助けようとしとる。

 もう誰も。
 血を流すようなこと、してほしないのに―――!

小学生の時から逃げ足だけ早い私は、最近鈍っていた身体の力を総動員し、迫るリーリィを引き離すべく長い廊下をひた走る。
吹き抜けになっているので、階下の様子も見えていた。

――アレイストと目が合う。
こちらへ来ようと、膝を撓(たわ)めて――

『アレイスト! 来たらあかん!!』

 リーリィはアルジェインをまだ持っとるんや。せっかくアスタから離したっちゅうのに、アンタも来たら意味ないやん。

目算で、たぶん地下に降りる扉だと思うところまでの距離を測る。

 ち・か・み・ち・!

手すりを乗り越え、私は下に飛び降りた。

 だいたい二階よりちょこっと高いくらい。
 最近はお年頃やしやってへんけど、ジャングルジム飛び降り競争経験のあるあたしは、それくらいの高さは平気やった。

 のに。

『このアホンダラ過保護男が――ッ!!』

飛び降り途中でまんまとアレイストに抱き止められ、その腕の中に閉じ込められてしまった。

 あほあほあほ、あたし今銀ネックレス着けとるゆうの!

身を翻し、アレイストは私を抱えたまま床に静かに着地する。と、グルリと視界が回った。

キィン! と耳のすぐ側で金音。

アレイストが、振り上げられたアルジェインをいつの間にやら抜いた剣で弾き返すところだった。

 ひいいっ。恐れていた展開に――!!!


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