そして、流れは予想もつかず
――確かに。
二重になった気配に、二の姫が孕んでいることを確信する。
それを従兄弟も理解したのか、座り込んだまま茫然と姉妹を見ていた。
「姫……」
エイスールの覇気のない声にリースティアは肩を震わせる。チラリと姉の肩越しに青年を見やり――視線をそらし、隠れるように姉にしがみついた。
その怯えともつかない拒否の仕草に、エイスールは言葉を無くす。
―何も考えていない小娘。
―ただの糧。
精血をいただくついでに少女を抱いたのは、特に考えあってのことではない。
彼らにとって食事と性欲が結び付いたものゆえの流れで、少女に特別な情があった訳ではない。
――なのに。
魅了による支配を恋だと勘違いしている娘が愉快だった。
心にもない甘やかな睦言に頬を染め、全てを与えた娘を、影で嘲っていた。
――子が出来ようと、相手はただの餌。
そのはず、なのに――
「……リースティア、」
名を呼ぶと無邪気に笑顔を見せていたはずの少女は、彼の声に怯えて姿を隠す。
「ねえさま……姉さま、もういいから……帰りましょう、はやく」
「リース……、わかったわ、大丈夫――」
幼子のようにぐずり、不安定に瞳を潤ませる妹を気遣いながら、シーアはアレイストに刺すような目を向けた。
彼は頷いて、あとで伺いますと唇だけでささやく。
子が出来たこと、それとも支配下にあった娘に拒否されたこと、どちらがショックだったのか、茫然自失から抜け出せないでいる従兄弟にため息をついて、アレイストは姉妹を見送った。