メロメロなんです


 きーやーあーあーっ。
 あかんー、心臓ぶっ壊れるー。

「情けない息子だが、それでも大事な子には代わりない。身を削り救ってくださったことに感謝する、姫君」

真摯に向けられる深い紺紫の瞳に陥落寸前。

 アレイストもあと二十年くらい歳取ったらこんな素敵になるんやろかー。……無理やな、アイツ落ち着きないし。

「なにかお詫びをしたかったんだが、君は物品には興味がないときいたからね。こんなもので済まないが、殺風景な病室にいる間は、心が和むかと思って」

そこで背後のチョイ悪おじ様が進み出て、私にいろとりどりに飾られた大きな花籠を渡してくださった。
薔薇を中心にした、アレンジメントフラワー。

「わあ、有難うございますっ! お花、プレゼントされるの初めてー」

ウキウキとそれを受け取ろう――としたけれど如何せん、私の手はまだ復活しきっておらず、控えていたメイドさんが心得顔で、落とす前にベッドサイドに置いてくれた。

 花は食べられへんとゆうのに、見ているだけで心が浮き立つ。
 ステキなおじ様からの贈り物だというならなおさら。

ニコニコする私に、お父様はクスリと楽しそうな笑顔を見せられた。

「なんだ、アレイストは意中の女性に花を贈ることもしていないのか。駄目だなぁ、あいつ」

からかうような。
ちょっと悪戯めいたそれを見て、改めて、納得した。

「――やっぱり、アレイストのお父様ですね。笑った顔、良く似てます」

顔っていうか――雰囲気。

その発見にふふふと得意になってると、意外なことを聞いた、という眼差しが向けられて。
チョイ悪おじ様も意外そうな目で私を見ていた。

 ……なんでっしゃろ?

「笑顔が、ね……。そう、それは良いことを聞いた」

クスクスクス、愉快そうな様子を隠さず笑っていらっしゃる。
何がそんなにオカシイのか、わからない私は首を傾げるだけ。

「……そう、君は息子の笑顔を見ることが出来るんだね。なるほど……」

 ? そんなん、あたしだけやのうて、みんなも見とりますけど。

ぽん、と頭を撫でられた。
それは、アレイストが私にするみたいな感触で、そういうとこも似てるな、と思う。

「ならば、私は君を歓迎しよう、ミツキ。アレイストの――真月の花嫁として」

深い、謎めいた宣言。

 またなんかあたしの預かり知らんとこでよくわからない何かが決まった気がする。

しかし、

そんなラスボスめいたニヒルな笑みもお素敵ですおじ様……!


*前目次次#
しおりを挟む
PC TOPmobile TOP
Copyright(c) 2007-2019 Mitsukisiki all rights reserved.

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -