怪我のひみつ


『……ジャンシール卿……、まさかもしや、』
「代表は父だけれど、俺も一応理事席持っていたりするんだよね」

 こいつ思いきり権力使う気やーーー!!

「ミツキ様は充分一族のせいで迷惑を被っているんですから、その慰謝料だと思っておけばいいんですよ」

ロルフが爽やかな笑顔で黒いことを言う。茶器を受け取りながらアレイストも頷いて。

「病欠なのは間違いないんだから、甘受すべきだよ」

 あああ、ううう、まあ、それはそうやけど〜……、

『問題なんは勉強の方やん。絶対休み明けついて行けへん〜〜。てゆか、冬休み中の課題とか……っ!!』

 休み明けにある試験とかっ。
 留学生は別に試験内容組まれとるけど、誰かにノート写さしてもらえるやろか。
 みんなあたしのこと遠巻きにしとるから、言い出しにくいなー。

「その辺は俺が面倒見てあげよう。とりあえずミツキの今の仕事は、体調をなるべく早く整えることだからね」

 むー。確かにこやって話しとるだけでスッゴい眠いんやけど。起きたばっかやのに。

「アレイストとロルフは? 私と同じ、以上、怪我、大丈夫?」

二人とも今見る限りケロリとしているからうっかりしていたけれど、と私は改めて彼らの具合を探った。

 アレイストはあんなんなっとって。
 ロルフは脇腹その他、えらいズタボロやったし。
 一週間の間に治るものでもなかったと思うんや、人外アレイストはともかくロルフは。
 お茶をサーブする姿には乱れがないけど。

「そういえば、私の怪我、治ってるのは何故でしたか?」

今だゲンコツが作れないぷるぷるする手を持ち上げて、訊く。
 アレイストが塞いだって言ってたけど、どうやって?
自分でやっといて何だけど、こう、肩口から手首まで一直線ズバーってしたし。

神経とか血管とかの損傷を全く気にせず。

 ……うん、考えなしでした、そこは認める、あとで覚えとったら、さっきの言い合いのことは謝ったる。
 せやから教え。

チラリ、と二人が顔を見合わせる。
まずアレイストが軽く袖口を捲って怪我の場所を示した。
言うても、ぐずぐずになってた跡なんかまるきりなくてツルツルやったけど。

「ミツキの無茶のお蔭で、跡形もないよ。――あの量で足りるはずもなかったのが、どういうわけか」
『ああ、それ後で教えたる。内緒の秘密やねん』

内緒の秘密? と怪訝に首を傾げるアレイストに頷く。
うん、内緒の秘密。誰に教えてもろたんか忘れたけど。

「アレイストは私のお蔭ー、と。ロルフは?」
「ルーシアに舐めてもらったんだよな?」

王子のクセに、ニヤニヤと品のない笑みでアレイストがロルフに確認する。
ピキリとロルフの笑顔が固まったような気がした。


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