夢の狭間
「 ふ、ふははははっ! 気に入った、気に入ったよ花嫁! いいさ、教えてやる、本家のタヌキ共の弱点だな? 」
腹を抱えて大爆笑する幽霊。
いや幽霊とは違うんやろうけど。しかもタヌキて。
うろんな目付きになってしまった私を許してほしい。
なんや、聞いてたアルジェンのイメージが消えてまうわ〜。
銀が形をとったような神秘的な姿をしているけど、本質はアストリッドに似てるような気がする。と思えばアレイストの気配を感じることもある。
遡ったら先祖やゆうから、当たり前なんかも知れんけど。
――自分は残思だと“アルジェン”は言った。
本来のアルジェンの魂は既に輪廻の環の中にいて、剣を使っていたときのアルジェンの意思と、剣のチカラが凝り固まって形を取ったのが自分だと。
それから色んな話を聞いた。
脳みそがパンパンになるくらい、色んな話を。
きっとアレイストたちすら知らないようなことまで。
―――長い長い話をした。
アルジェインの持ち主は何度も代わったが――
――オレと意識を重ねられた剣の主はお前が初めてだ
自らの力で未来を行こうとする
後継に、祝福を――
ふわりと額に唇が押し当てられた感触がして、
―――ポカリと私は目を開けた。
「ミツキ」
明かりの消えたうす暗い――ここって病室?
無機質な天井がまず目に入って、ボンヤリした視界を横に動かすと、蒼白い顔色をしたアレイストがそこにいた。
「……ミツキ」
ぎゅっと、眠っている間も繋がれていた手を強く握りこまれる。
横たわった私からは彼の上半身しか見えなかったけれど、五体満足なのはわかった。
―――の、言ったとおり。
ん、あれ? ―――って誰だっけ。
「ミツキ?」
うるさい、考え事しとるんや、黙れ。
イミューンの血は
奴等にとって特効薬にもなる。
気をつけろよ、
お前の対以外に、奪われるな。
ホンマ、やっかいごとばっかりや。
真月の一族は
これと決めたらしつこいからな。
見つかったのが運のツキ、諦めな。
他人事やと思て、―――め。
オレも通ってきた道さ。
まあ、悪くなかったよ、今思えば。
くすくす笑う、誰かの声が遠ざかって行く。
普段は思い出さないだろう、意識の奥底に沈んで――私は、もう一度、目を閉じた。