密室と密事
げえ、あいつ人をさんざん待たせておいて、女とこんなトコロでちちくりあうつもりかい。
イヤー、フケツー、と心の中でアレイストを罵倒しつつ、私は彼女の狙いが分かったような気がした。
ようするに、私をここに閉じ込めたのは、自分と王子が仲良しなところを直に見せつけて、身のほどを知らない愚かな小猿に思い知らせようってコトなんだろう。
いやでもさ、あたし、アレイストが誰とイチャイチャしようが自分に災いが降りかからへんかったらどうでもええんやけど。
ビミョーにポイント外してはりますよ、お姉さん。
エロいキスを交わしている二人を、アホらしい気分で見てた私だったけれど、ふと閃いてバッグを探った。
これ、写真撮れば王子の弱味になるんちゃうやろか?
少なくとも、もう近づくなと言える理由にはなるんじゃなかろうか。
教室でこんなイヤラシイことする人と話したくないの! とか純情ぶったキャラで押し通してやる。携帯携帯……、と、モバイルフォンをバッグから出して、自分のお馬鹿さに気付く。
携帯電話あるやんけー!
助けこれで呼べばよかったやんけー!
つうかコレ取り上げへんて、美女軍団マヌケちゃうんかー!
ガックリと肩を落として今さらな電話を掴むと、着信ありのランプがついていた。
サイレントにしていたから気がつかなかった。開いてみると異様なくらいの着信数。アスタから数件と、……L・ジャンシールて、アレイスト?
なんでアイツの番号入っとんの?
と一瞬首を傾げたが、この携帯電話は学園に支給されたものだから、代表の番号が予め入っているんだろうと納得した。
今まで気付かなかったのは決まった相手にしか使ってなかったからだろう。
これだけ電話をかけてきているということは探されていたのかもしれない。
ちょっとだけ許してやってもいいかも……、とお人好しにも思った私は、彼らの方へ顔を戻した。
覗き趣味はないけど、私を探していた(らしい)彼が何故彼女といちゃついているのか。
まあ、引っ張り込まれたってとこやろうけど。
現に、恋人同士のように抱き合っているにもかかわらず、アレイストの瞳は冷めきっている。
ねちっこい音が聞こえそうなキスをしながら、無表情にそのバイオレットの瞳で自分を貪っている女を見ていた。
………こっわ。
あんな顔もするんやん、いつものうさんくさい笑顔よりなんぼか“らしい”気がするわ。