許容する力
王だと言われる原因であるこの能力が、ミツキを守れることを容易くするなら、いくらでも使ってやる。
イミューンであるミツキを守れる力を持っている、――その為に王として生まれたのだと、今の俺ならそう思う。
――なんて言ったらまた、『キショイ』って睨むんだろうけど。
甘い言葉を受け付けない、俺のツレナイ女神。
とりあえずは、君の憂いをひとつ断つために、煩わしい蟻共を駆除しよう。
「っ………!」
外へと続く扉に向かって佇んでいた俺は、抑えていた魔力を一気に解放した。
まるで熱いものに近付いたようにエルンストが息を飲んで退く。
この状態の俺の側にいるのは辛いだろうと、人間である使用人たちはミツキの周りをあらかじめ守らせているから、動転して使い物にならない者はいない。
今いるのは、俺の奮う力に耐性のある者ばかり。
……のはずだったんだが、何故か崇拝の視線が熱さを増しているような?
魅力酔い?
おいおい君タチ、仕事はしっかりしてくれよ?
と、心配するまでもなく、皆の思考は一丸となって“アレイスト様のお役に立つのだ!!”なんてやる気の篭ったものに――
……何かイヤだ。
思えば全開で魔力を使ったことなどこれまでなかった。
自らにどれ程の力があるのか、自分自身でにも分かっていない。
ミツキの言葉で言うなら“キレた”時でさえ片鱗を見せていただけ。
感情に任せるのではなく正気を保ったまま、広く広く魔力を敷地内に行き渡らせた。
“吸血鬼て霧になったりするて話もあったけど、アレイストなんや黒いのぶわーっと出しとったな”
目視できる俺の力をそう評したミツキ。
一族の者にしか見えない力の発露を、ミツキは黒い霧として認識したらしい。
じゃあ、今、君が外を見れば、うちの周りがスッポリと黒い霧に被い尽くされたように見えるんだろうか。
「……やっと君の本気が見られるのかな?」
地下に向かうベルンハルトの呟く声が耳に入った。
うっとうしい監視者め。
巫女姫に俺の状態が筒抜けになるのは憂鬱だったが、避けては通れない道と諦める。
ミツキのために。
俺は、疑い様のない、圧倒的なチカラというものを見せつけなければいけないんだ―――。