争うということ


「――あの恥知らず、随分と隷族者を溜め込んでいたようだよ。気味が悪いくらい同じ気配がざっと二十、オマケに奴の支持者までやって来てる――昨日の今日で動きのよいことだ。――地下を目指してるってことはやはり主の奪還が目的だな。もう始まってる。――アレイストに加え、エルとベルンハルト殿が居るから、直ぐに片付くよ」

――片付く。

考えないようにしていたことが、身に迫る。
襲撃があると聞いたときから、頭のすみにあったその問題。

片付くって、片付けるってこと?
具体的に、それは相手をどうすることなの。

そんなの、今までの状況からして決まっている。

――傷つける――殺すって、ことだ。

クリストフェルは、アレイストに刃向かい、留守を狙って彼の花嫁(ということになってる私)を傷付けた。
こちらとしては許しがたいこと、その場で断罪されなかったのが不思議なくらい――とは、メイドさんたちの意見。

アレイストが言うには、殺しても飽き足らないが、長老の息が掛かっている奴を勝手に馘ればこちらが不利な状況に追い込まれる、とのこと。

王と称されるアレイストだけど、今現在化石ジジイどもと微妙な関係らしい。

本来なら王であるアレイストが自分のものだと公言した相手を、他の一族が手出しするようなことは許されない。

 だからあたしを婚約者に仕立て上げたんやし。

思ってたよりアレイストが連中にナメられてたため、それは半分失敗してるけど。
クリストフェルの処分は長老の沙汰待ちということになっていて、だけれど、無罪放免になる確率は高いようだ。

 やって、あのアホンダラは長老たちの狙い通りあたし――イミューンを、手に入れようと、したわけやから。

 ……ムカツク。

もとより、親族とはいえ敵対関係にある二家。
しかもクリストフェルがジャンシール本家に対して転覆の機会を狙っていたことがわかったからには、ただで済ますわけにはいかない、というのがこちらの事情。

しかし主に忠実なお人形さんである隷族者は、主奪還を目的になりふり構わず襲ってきている。
支持者、ということは一族も混じっているんだろう。

ぶつかって、無事ですむわけがない。


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