待機
不思議なことに、クリストフェルといわば同じ立場であるはずの、“私をどーにかコマす団”のメンバーだったはずのボクちゃん――エルンストとベルンハルトさんはこちらに協力をしてくれるらしい。
私付きのメイド(ええ、そんなんおるんですよ……)であるサーラがこっそり教えてくれたことには、エルンストはクリストフェルがしたことに“品がない!”とかなり激昂していて、いつもケンカ腰のくせに、私に対する気遣いの言葉も発していたそうだ。
(ついでに言うならば、「潔癖なんですよね、そこがちょっと可愛いらしくていらっしゃるの」と、メイドたちから意外な人気を獲得していることが判明したりした)
ハルさんは元からアレイストの味方の様だったし。
二人はクリストフェルがぶち込まれている牢屋の見張りをしている。
大将アレイストは腕の立つ部下さんたちと地下に続く扉の前、広間で待ち構え、城の周りにはアレイストが動かせるだけのジャンシール家の私兵を配置。(兵ってナニ、兵って)
他の、一族やない使用人さんたちはどないしとるんやろ、と聞いてみれば各々自分の得意とする武器を持ってワタクシを護るために部屋の外に待機しているとのこと。
……得意とする武器ってナニ。
何でも皆様、ジャンシールに仕えるたしなみとして各種体術を取得なさっているそうで。
そんなたしなみがいるってどんな雇用条件やねん。
まあ中には運動がダメなひともいるのでそういう人たちは後方支援。
何にも出来へんの私だけかー…。
守られてるだけの役立たずですよ、イェイ。
と卑屈になってもすぐに何かが出来るようになるわけじゃないし、だいたいこういう状況で普通の女の子である私が、自分が何も出来ない事実に引け目を感じるなんてこと事態、おかしいから。
―ミツキは大人しくしてること。
幼稚園児に言い聞かせるように何度も繰り返していたアレイストの声が蘇り、ヘイヘイと頷く。
人外魔境でナニが出来るっちゅうねん、大人しゅう騒ぎが収まるのを待ってますわ。
にしても、外がどうなっているのか閉じ込もっている現状、めちゃくちゃ気になることは確かで。
意識を集中して、様子を読み取っているらしいアストリッドに「どんな感じ?」とおそるおそる訊ねると、遠くを見る瞳で、こちらに顔は向けないまま答えてくれた。