じょおうさまー

結局、クリストフェルから何も聞きだすことが出来なかった私はモヤモヤしたものを抱えたまま、そのときを迎えた。

襲撃の時が近いらしい。外出禁止を申し付けられ、単位を気にしつつ学校を休まされ暇を持て余している私をよそに、アレイストたちは連日忙しそうにしていた。

『スッキリせんー、アレイストにセッキョーされゾンー、むかつくううーーー』
『あいつが素直に答えるわけないじゃん。ソウウケでとりあえず溜飲下げときなよ』

ベッドで胡座をかき、うだうだ枕を揉みしだいている私に対し、隣に寝っ転がったアストリッドは最初からそうなると読めていた、なんて冷たいことを言う。

ちなみに囚われ画像を送った佳奈からは、【モエエエエエエエエエエエーーーー!!!】というゲシュタルト崩壊しそうな返信がすぐさま返って来ましたけども。
次回作は天使の血を引く滅んだ国の王子様が戦勝国の王様や将軍や神官さんたちにあれこれされちゃうファンタジーらしいです。
こわい。

『なんかなー、アレイストが嫌いとか、権力を持ちたいとか、そういう単純な話やないような気がしたんやー』

リーリィのことも。
本当は一番聞きたかった。でも、彼にとっては彼女も、道具でしかなく、何の意味もない存在なのだとはっきり知ることを、私は無意識に避けたのかもしれない。

「―――来た」
「な――、ぉわッ!?」

何が、と訊ねようとした瞬間、アストリッドが跳ね起きた。ロングニットにレギンスというスタイルを素早く脇に置いていた黒いマントに包む。長い金髪を一つに結って。
キョトンと瞬いている私を後目にどこに置いてたんだか、慣れたように武器を手に取った。

 来た、って――リーリィ?
 てか、それよか、

『……なあ、ツッコんでええ? 女王様』

 黒いマントは戦闘服ってことで納得しとこう。
 長身にごっつう似おてるし、かっこええ。

 しかし。

『なんで鞭やねん………』

アストリッドが手にしているのは、実はリアルで見るのは初めてかも知れない、

【 鞭/むち:馬や牛などを思うように動かすために打つ道具。竹の棒や革ひもなどで作る。 】

 ……だった。

 じ、じょおうさまーーーっ。

親友のアレな姿に引き気味の私には気付かず、アストリッドは不服げに唇を尖らせた。

「アレイストたちは剣の方が得意なんだけどね。あたしはイマイチなんだ」

そう仰るアスタ女王様は、更に投げナイフをマントの下にテキパキと仕舞っていく。

 いやいやいやいや、得意不得意を言うてる訳やなくてな?

ヒュッと手首をしならせ、なれた風に鞭をひと振りしたあと、返す動きでいく巻きか輪を作り腰辺りに固定する。その動作はあくまでも自然で。

 女王様や、マジ女王様やっ。
 いったいどないな過程があって鞭なぞ得意にならはったんですかお姉サマ。
 まさか旦那さんをそれで調教したりされてませんよね。
 いや、趣味嗜好は個人の自由やけども友人のそないな面はなるだけ知りたないので訊いたりせんけどもー。

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